2017年9月15日
攻撃は最大の防御なり…特許トロールとの戦いも然り
ごきげんよう!
シャンパンで朝を迎える。これ以上に素晴らしい1日の始まりがあるだろうか。特許トロールとの長きにわたる戦いで勝利したばかりの今こそ、美酒を浴びるにふさわしい瞬間だ。
しかも、今回はこれまでの勝利とひと味違う。本当に画期的な勝利だった。特許トロールのWetro Lanがしっぽを巻いて逃げ出すまで追い込んだことは、特許法の歴史における重要な前例として残ることだろう。今回のような勝利を手にした事例はこれまでに存在しない。特許トロールに告訴を取り下げさせたばかりか、賠償金も支払わせたからだ!賠償金といっても形だけで、裁判にかかった費用のごく一部にすぎないが、ことわざでもあるように「先んずれば人を制す」だ。
事のいきさつを説明しよう。
すべては2016年の秋に始まった。我々は、データパケットのフィルタリング技術に関する特許を侵害したとする申し立てとともに、高額な示談金を支払えば裁判に持ち込まないという「親切な」申し出を受けた。つまり、使い古されたお決まりの展開だ。だが、ご存じのとおり、当社が特許トロールに屈することはない断じてあり得ない。取引にも応じない。応じたら、後でさらに要求を突きつけてくるだろう。すると、案の定「裁判で会おう」という強気の言葉を返してきた。それからしばらくして、実際に裁判所で顔を合わせることになった。彼らのお気に入りの裁判所であるテキサス州の連邦地裁だ。
では、どういう特許だったのか。
あまりのくだらなさに、電子フロンティア財団(EFF)はStupid Patent of the Month(今月のおバカ特許)に選んでいる。その内容は、広く知られているファイアウォールの仕組みで、特許登録されるはるか昔に公開されている。実は、もともとの考案者と特許権者は特許料の支払いを2012年に止め、権利を失効させた。大して役に立たない特許なので、彼らの行動は理にかなっていた。しかし2015年、その失効した特許をWetro Lanという設立したての企業が購入した。同社の最初のもくろみは、古典的なファイアウォール技術の利用に関して、(お察しのとおり)いくつものIT企業を訴訟攻めにすることだった。
だが、特許は失効しているのに、そんなことが可能だろうか?実は、特許侵害に対する損害賠償請求は6年前まで遡ることができる。そこでWetro Lanは2010年から2012年にかけて開発されたカスペルスキー製品について訴えてきたのだ。不条理劇の始まりだ!
しかし、どんなにばかばかしくても、厄介な小物トロールを追い払うには裁判費用も時間も手間もかかる。そして、被告側の企業は裁判につきものの費用や苦痛に晒されるくらいなら示談で済まそうとすることを、特許トロールは知っている。実際、この手口は大抵の場合、成功していた。訴えられた企業は比較的少額を特許トロールに支払って黙らせ、もっと価値ある業務へ戻った。ただ、長い目で見ると、これは失策だ。楽な金もうけに味をしめた特許トロールは、何度でも要求してくる。いずれは技術業界全体が損失を被ることにもなる。特許トロールは悪銭でさらにゴミ特許を買い、業界を攻撃してくるからだ。こうして延々と悪循環が続く。
だが、当社は違う。
いつもどおり、本格的に裁判に向けて準備を始めた。
Wetro Lanはすぐにその意味を理解し、(告訴取り下げのための)「友好的な」要求額を6万ドルへ、その後1万ドルに引き下げた。
さて、通常であれば、示談金がスズメの涙ほどの額になるまで引き下げられることになるだろう。だが、今回はその定石を無視することにした。訴訟を取り下げたいのであれば1万ドルを当社に支払うように、と訴えたのだ(裁判では原告と被告の「双方」が合意した場合のみ訴訟の取り下げが可能)。1万ドルとは、破格の値段だ。これに応じなければ、我々はこれからも裁判で顔を合わせ、特許トロール側はさらに多額の費用とエネルギーを(勝ち目のない訴訟に)投じ、さらにはKaspersky Labの裁判費用を支払うリスクを負うことになるのだから。
普通ではないカウンターオファーを受けた特許トロール側は、ヒステリーに似た状態に陥った。
これで、かねてより抱いていた疑念が確信に変わった。Wetro Lanと同社の法律顧問であるCorcoran IP Lawは、(i)カスペルスキー製品に関してほとんど何も知らず、当社製品の基盤である先進技術についての知識はさらに少なく、(ii)特許法についての理解も不十分なようで(特許専門の会社にしては知っている方かもしれないが)、(iii)訴訟をすぐにでも終わらせたいと願っているのだ!時間をかけずにあぶく銭を稼ごうと思っていただけなのに、型通りのやり方に対してまったく想定外の抵抗を受けて要求額を減らす羽目になり、もっと「手のかからない」標的に目を向けるしかなくなった。だが、そうは問屋が卸さない。この件から簡単に逃れられるとは思わないことだ。始めたのは向こうなのだから。我々に二度と同じ手を使おうとしないように、この特許トロールへのワクチン投与が必要だった。同時に、当社と関われば痛い目に遭うということを、他の特許トロールに向けて伝える必要もあった。そして、我々は待った。
(ところで、Corcoran IP Lawは特許法のゲームに不慣れな新卒スタートアップ企業ではない。数年前から存在し、濡れ手に粟の商売を休みなく続けている。我々の知るかぎり同社は148件の訴訟に関与しているが、それ以上に及ぶ可能性もある)
待つこと2週間、こんな要望が記されたレターを受け取った。「貴社の要求額の引き下げを検討いただけるだろうか?」
当社はこう返信した。「いくらまで?」
返事はこうだ。「2,000ドルまで下げていただけるとありがたい」
「大変申し訳ないが、それはできない。最終提示額は5,000ドル。再訴禁止効を伴う告訴取り下げ(すなわち、同一の訴えを再び提起できない)も、合わせて要求する。回答期限は2日間、これ以上の引き下げには応じない」
ビンゴ!思惑は当たった。
事の次第は以上だ。特許恐喝者との戦いの歴史に、新たな勝利が刻まれた。スコアは5対0だ。この中には、23件の和解(重要なことだが、当社は一銭も支払ったことがない)や、「やってみろよ!」と返信したところ相手がすぐに退散してしまった無数の案件は含まれていない。
スコアは5対0、特許トロールに支払った額は0ドル
これは、米国ではかなり稀な結果であり、狡猾な特許トロールを封じ込めてきた結果でもある。ただし、あまり賢くない特許トロールは、これからもやってくる。当社が対特許トロール戦で好成績を収めていることも知らずに。我々の対特許トロールの基本スローガン「弾が尽きるまで戦い続ける。相手の最後の弾が尽きるまで」も知らないだろう。知っていれば、関わろうとしないはずだ。でも、彼らは知らない。だから返り討ちに遭う。
当社の特許部門には大いに感謝したい。実践を通じてノウハウを蓄積し、腕を磨き、今や絶好調の対特許トロール機を操作している。しかも、トロールと戦うためなら、まったく新しいアプローチを試すことを厭わず、規格外の方法も採用する。諸君、見事な仕事ぶりだ!
P.S.:興味深いことに、業界のパートナーや競合他社は当社と正反対の対策をとっている。残念ながら、寄生虫に餌をやる方を選んでいるのだ。これでは、前述したとおり、もっと強力で、貪欲で、たちの悪い特許トロールを呼び寄せ、IT業界の発展を妨げることにしかならない。
そろそろ、その場しのぎの対応をやめて、現状に目を向け、法外な金を搾取する特許吸血鬼どもの蔓延に終止符を打つ時期ではないだろうか。