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カスペルスキー製品に搭載のエミュレーターテクノロジー

コンピューターウイルスがなぜ単に「ウイルス」と呼ばれているのか、不思議に思ったことはないだろうか。実のところ、やや誤解を招きかねないが、ウイルスという言葉は現在「あらゆるタイプの悪意あるプログラム」または「コンピューターに何らかの悪影響を及ぼすプログラムを表す」のに使われている。ちなみに、引用したのは当社のエンサイクロペディアにある表現だ。

ただし(引き続きエンサイクロペディアを引用する)、「厳密に言えば、ウイルスとは、プログラムコードのうち、複製して」拡散するものを指す。インフルエンザウイルスなどの生物学的なウイルスがそうであるように。

不思議なことに、そのように定義されたウイルスたちは、何年も前に消滅してしまった。最近の悪意あるプログラムは、複製することはそれほどないが、コンピューターからデータを盗み出したり、データを完全消去したりするという誠に厄介な機能を持っている。トロイの木馬がその一例だ。とはいえ今でも、「コンピューターセキュリティの技術」と聞いて何を思い浮かべるかと尋ねられたら、大方の人は、実験用の白衣化学化学防護服に身を包んだ科学者が試験管を手にして危険物を隔離しようとしている様子を想像するのではないだろうか。実際には、生物学上のウイルスを処理するときにしかそんな場面は必要ないのだが。

つまりこういうことだ。コンピューターウイルスは死滅した。しかし、ウイルスの検知と「駆除」(これもまた微生物学から持ち込まれたおかしな表現だ!)に使用されていた分析の手法は現在も有効であり、開発が続けられている。そして今でも、最新のウイルスマルウェアとの戦いに大きく貢献している。そのような「昔ながらの」テクノロジーの1つに、エミュレーターがある。

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スノーシュースパムと戦う「HuMachine」インテリジェンス

私のところには、山ほどのスパムメールが届く。その数はたいていの人よりも多いだろう。数十年も名刺を配り歩いているし、プレゼンのスライドやカタログなどには会社のドメインが記載されている。それに、私のメールアドレスは単純だ。時折、長年にわたり使い古された社員のメールアドレスをスパムメールのハニーポットとして「放置」しておき、その社員には少しばかり変更を加えたメールアドレスを新しく用意したりするが、私のメールアドレスの場合それはない。なぜなら、第1に、私は敵が誰なのかを正確に把握しておく必要があるし、第2に、自社のスパム対策の品質を自分で確認できる状態にしておきたいからだ。それに、笑えるスパムメールを読む機会が少しばかり増えるのは構わない。

蝶を扱う昆虫学者のように、私は受信したスパムメールをすべて別のフォルダーに移し、判定結果をチェックし、傾向や誤検知を判断する。検知漏れのサンプルは、スパム対策チームに転送する。

興味深いことに、年初からスパムメールの量が格段に増えている!そしてその構造や形式を調べてみると、ほとんどが1つの送信元から来ているようだ。ほとんどのメッセージが英語で書かれており(2通だけは日本語)、そして、ここが重要なのだが、このスパムメールは、当社の製品100%検知された!さて、当社のスペシャリストに尋ねたところ、あるタイプのスパムメールが大津波のように押し寄せていたことが確認できた。「スノーシュースパム」だ。年末年始はスパム活動が減るのが通例なので、異常事態だ。

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クラウドにある10億

先日、目ざとい利用者から、Kaspersky Security Networkの項目数が「10億」を突破したことへのお祝いの言葉をいただいた。ありがとう!まずはこの「10億」が何なのかを説明しておくべきだろう。

最初に言っておくが、心配は無用だ。この10億は皆さんのコンピューターにとって招かれざる何かではない。そういうものとは違っていて、ちょっと複雑なものだ。では、基本的な定義から始めるとしよう。

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普通なら耳にすることもない機能:2017年バージョン

Kaspersky Labは世界を守り続けてきた。今年で…何と19年だ!厳密に言えばもう数年長いのだが、Kaspersky Labを(英国)企業として登録したのが19年前のことなのだ。

悲しいことだが、「世界を守る」のは一度限りのこと、1回守ればそれで終わり、などということはあり得ない。サイバー脅威は今この瞬間にも進化し、その影でサイバー犯罪者が新たなカモを探して絶えずデジタルの世界を徘徊している。そう、この世界が100%安全になることは決してない。だからと言って打つ手がないわけではない。さまざまなデバイスを使い、それぞれ違った生活を日々送っている世界中の億単位の人々には、各自の個人情報やデータを保護し、オンラインストアやネットバンキングを安全に利用し、デジタル世界の悪党やサイバー変質者、詐欺のプロどもから子供たちを守る手段が残されている。

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人間の怠惰、サイバーセキュリティ、そして機械学習

人間は怠けたがる生き物だ、とはよく言ったものだ。やらないことが可能なことならば、やらないで済ませようとする。しかし、逆説的に考えれば、これはいいことなのだ。なぜなら、怠惰は…進歩の原動力だからだ!え?どうしてそうなるかって?それはつまり、人間がやるには大変過ぎる、時間がかかり過ぎる、複雑過ぎると見なされる仕事は、どこかの怠惰な(しかし真面目な)人間(ホモ・サピエンスならぬホモ・レイジエンスか?(笑))たちが、機械にやらせようとするからだ!そういう姿勢をサイバーセキュリティの世界では「最適化」と呼ぶ。

膨大な数の悪意あるファイルやWebサイトを日々解析すること、将来の脅威に対抗するための「ワクチン」を開発すること、プロアクティブな保護対策を絶えず改良し続けること、その他もろもろの重要な作業をこなすことは、いずれもオートメーションなしでは断じて不可能だ。そして、オートメーションで使われる主なコンセプトの1つが、機械学習だ。

機械学習は10年以上前からサイバーセキュリティに利用されてきた。大々的に宣伝されていなかっただけのことだ

サイバーセキュリティの世界では、そもそもの(サイバーセキュリティ自体の)始まりからオートメーションが存在していた。たとえば私は2000年代初め、入ってくるマルウェア検体を解析するロボットのコードを書いたことがある。検知されたファイルの特性を判定し、この判定結果に基づいて、増える一方のマルウェアコレクションの中の該当フォルダーに振り分けるようにするコードだ。過去にはこうしたことをすべて手動で行っていたとは、(その当時でさえ)想像するのは難しかった!

しかし近頃は、ロボットにやらせたい作業について明確な指示を与えるだけでは十分ではない。作業の指示は不明確に与える必要があるのだ。嘘ではない!

たとえば、「この写真の中にある人間の顔を見つけなさい」という作業であれば、人間の顔をどうやって選び出すのか、人間の顔が犬の顔とどう違うのかについては説明しない。その代わり、ロボットに写真を何枚か見せて、「これが人間、これが人間の顔。そしてこちらが犬。残りは自分でやってみなさい」と言う。つまるところ、この「創造の自由」を機械学習と呼ぶのだ。

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作り物の「AI」バブルとサイバーセキュリティの未来

シリコンバレーでは「人工知能」(AI)がブーム、と書かれたニューヨークタイムズ誌の最近の記事は、サイバーセキュリティの近い未来と遠い未来の両方を多くの人に真剣に考えさせるきっかけになったと思う。

たとえばこんな問いだ。

  • 「AI」への熱狂的な関心はいったいどこから来ているのか。今のところ、未来学者の妄想の中でしか存在していないようだが、これはどこへ向かっているのか?
  • 良くても何十年も前に発明されたものを「発明」しているベンチャーや、最悪の場合はバブル状態でしかないことがいずれ明らかになるベンチャーに、投資家たちはあと何百億つぎ込むことになるのか?
  • 機械学習によるサイバーセキュリティ技術の開発で得られる真のチャンスは?
  • この素晴らしい新世界で果たす人間専門家の役割とは?

シリコンバレーでAIの熱狂的な信奉者と話をしていると、時に、福音主義者の集まりに参加する無神論者のような気分になる

ジェリー・カプラン(Jerry Kaplan)氏、コンピューター科学者、著者、未来学者、起業家(シマンテックの共同創業者のひとり)

現在の「AI」領域で起きていることは、シャボン玉に似通っている。サーカスの道化師がシャボン玉を膨らまし続けたら、いずれどうなるかは誰でもわかる。そう、破裂するのだ。

もちろん、大胆な一歩やリスクの高い投資がなければ、素晴らしい未来が現実になることはない。しかし、現在の問題は、「AI」(カギ括弧を付けたのはAIが現時点で存在しないからだ)の熱狂が広がりを見せる中で、スタートアップの幽霊企業が登場し始めたことだ。

スタートアップが何社かあったところでたいしたことはない、と言う人もいるかもしれない。

大問題なのは、こうした幽霊スタートアップ企業が「AI機械学習」を取り巻く高揚感の新潮流に乗って、100万単位どころか10億単位で投資を惹きつけていることだ。そもそも、機械学習は何十年も前から存在する。最初に定義されたのは1959年で、70年代に研究が進み、90年代に開花し、今なお開花し続けているのが現状だ!そして現在、この「新しい」技術は「AI」という単語に置き換えられ、最先端科学のオーラを身にまとった。こうして、もっともらしいパンフレットが作成され、華やかで洗練されたマーケティングキャンペーンが展開されている。これらすべては、奇跡を信じたいという人間に絶えず付きまとう弱さを狙ったもので、いわゆる「従来の」技術を巡る陰謀論も添えられている。しかも悲しいかな、サイバーセキュリティ業界もこの新しい「AI」バブルから逃げ切れなかったようだ…。

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人工知能:今そこにある作為

人工知能(AI)…。この言葉は、プログラマーやSFファン、そして世界の命運が気になる人々の想像力に、感嘆と畏怖を呼び起こす!

人類の最良なる友であるR2-D2、邪悪なスカイネット、幻想的な『2001宇宙の旅』、終末を予感させる『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』、それからおそらくはゲイリー・ニューマン(Gary Numan)のおかげで、AIの概念はよく知られている。そう、本や映画、漫画、あとは…マッシュポテトのCMでも、AIは大きく取り上げられている。それに、最近登場した野心的極まるサイバーセキュリティ企業の数々でも、AI が販促資料のメインを飾っている。実際のところ、AIの存在を見出せない場所は、おそらく1つだけだろう。それは、この世界を構成する事実上すべてのものを図らずも内包し、あらゆる生命を宿す場所。そう、「現実の日常生活」という少なからず重要な領域だ。

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ITセキュリティの進化論パート3:今こそ悪しき寄生虫に対処を

やあ、みなさん!

ITの適者生存をテーマにもう少し話すことにしよう。3部構成にするつもりはなかったのだが、何というか結局そうなってしまった。

ともかく、ITセキュリティの世界にはびこる寄生虫という問題を今回ようやく取り上げているわけだが、実は前々から頭に引っかかっていたことだ。このダーウィン説についての投稿は、それをぶちまけるのにちょうどいい機会だったわけだ。読み進めばおわかりいただけるだろう。

今回のターゲットは寄生虫。当社が戦っている相手(「極」悪人)ではなく、自分たちも極悪人と戦っているとうそぶいている連中だ(哲学的にはどちらが真の悪者なのだ?)

検出結果を流用する寄生虫は、ITセキュリティ業界に大打撃を与えるだけでなく、間接的にサイバー犯罪を助長している

現代のIT業界はすさまじい速さで進化している。ほんの10~15年前の主流は、デスクトップ向けアンチウイスやファイアウォール、バックアップだった。いまや製品は多様化し、新たなセキュリティソリューション、アプローチ、アイデアが大量に生まれている。当社は、ライバルから一歩抜きん出ることもあれば、後れをとることもある。そしてまた、驚きで茫然自失することも。それは、新技術や革新、斬新なアイデアによる驚きでなく、ともにセキュリティ業界を戦うライバルの、恥知らずで厚かましく、とんでもなく無節操な行動による動揺からだ。

まずは、どういうことか説明しよう。

VirusTotalマルチスキャナーという非常に便利なサービスがある。約60種類のアンチウイルスエンジンを集め、ユーザーが送ったファイルやURLをスキャンしてマルウェアに感染していないかチェックし、その判定を返すものだ。

たとえば、あるユーザーがハードディスク/USBメモリ/インターネットで疑わしいアプリケーションやオフィス文書を見つけたとする。自身のアンチウイルスソフトウェアではウイルスは検出されなかったが、疑り深いこのユーザー、本当に感染していないのか確認したい。そこでVirusTotalサイトの出番だ。ここなら自身のアンチウイルスだけでなく約60種類のアンチウイルスソリューションでスキャンでき、しかも無料だから気軽に利用できる。ファイルをVirusTotalにアップロードすれば、さまざまなアンチウイルスがどう判断したのか瞬時に情報を得ることができる。

最初にはっきりさせておこう。VirusTotalに参加している企業もVirusTotalの所有者Googleも間違いなく「いい人」側だ。寄生虫たちとはまったくの無関係だ。VirusTotalは優秀な専門家チームによって運営され、長年与えられた仕事を極めて効果的にこなしてきた。(VirusTotalは昨年のSecurity Analyst Summit(SAS)でMVPを受賞したと言えば納得いただけるだろう。)いまやVirusTotalは新たなマルウェアのサンプルや悪意のあるURLを知る最も重要な情報源の1つとなっている。非常にスマートな、標的型攻撃を調査できる考古学的ツールでもある。

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ITセキュリティの進化論パート2:はったり製品による洗脳

やあ、みなさん!

約束どおり、今回の投稿では、進化論と、サイバー脅威に対する保護の進化経緯の共通点について、もう少し話そう。

生物の突然変異が何によってもたらされたのか、今も厳密にはわかっていない。なかには、意図的に遺伝子配列を変えるウイルスの仕業と考える常識破りの学者もいる(そう、まさに世界を意のままに操るモノがいたのだ!)。その真偽はさておき、同じような突然変異の過程がITセキュリティでも起きている。時にウイルスが片棒をかついでいるのも同じだ。

市場は預言者に食傷気味だ。今では「万能薬」でもうけるなら、多大な投資と売り込みが必要だ

セキュリティ技術は生存競争の原理に従って時間とともに進化している。新たな製品カテゴリの出現によって淘汰される製品もあれば、他の製品との融合を果たす製品もある。たとえば、90年代中盤に大躍進した完全性チェッカーは、いまやエンドポイントソリューションの脇役に収まっている。また、それまでの保護技術を補う新たな市場区分やニッチが生まれ(APT対策など)、積極的な共生過程をたどっている。その間にも、時折厄介な寄生虫が這い出してはぬくぬくと日差しを浴びている。まあ、構うことはない。これが物事の常だし、どうしようもないことなのだから。

ITセキュリティの市場シェアをめぐる競争では、「伝統的」技術の突然の終焉を予言する預言者が定期的に現れる。幸いにも、時を同じくして(絶妙のタイミングで!)はったり製品画期的な万能薬(先着5名には大盤振る舞いのディスカウント付き)が作り出される。

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これは今に始まったことではない。アンチスパイウェアを覚えているだろうか?2000年代初頭、スパイウェアを駆除する製品の巨大なバブルが、何もないところから発展した。多くのはったり製品が、「伝統的なアンチウイルス」ではこの問題に対処できない、という考えを顧客に焚きつけた。実は初っ端からすべてでっち上げだったのだが。

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ITセキュリティの進化論パート1:適応か、死か

「生き残る種とは、最も強いものではない。最もよく適応したものである。」
– チャールズ・ダーウィン

「ITセキュリティの未来」は好きなトピックなのだが、このテーマについての考えをしばらくブログに記していない。その分の埋め合わせをしようと思う。あまり脇道に逸れないようにするつもりだが、長文を覚悟してほしい。最新の情報セキュリティ技術、市場、トレンドに加えて、さまざまな事実や考察を紹介する。では、ポップコーンを片手に…始めよう…

ここでは理想のITセキュリティについて書く。また、セキュリティ業界がその理想に向かってどう進んでいるか(そして進化の道のりで何が起きているか)、そういったことをダーウィンの進化論でどのように説明できるか、について考える。自然淘汰の結果繁栄する種と、道半ばで脱落する種については、後年の古生物学者の研究に任せるとしよう。おっと、共生関係とは、寄生生物とは、といったテーマもだ。

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まずは定義をはっきりさせておこう…

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