お勧めのビジネス書9選

ビジネスを成功させるために読むべき本はどれか、と聞かれることが多々ある。学生、スタートアップ起業家、マネージャー、オーナー経営者、誰もがお勧め本を知りたがっている!問題ない、というのもお勧め本はいくつかあるからだ。ただ、どんなにお勧めだとしても、特定の本を読んだからといって必ずビジネスパーソンになれるとは思わない。とはいえ、読んで損はしない良書は確かにある。今回そのうちの9冊を紹介しよう…

私は、ビジネス書を大きく2つのカテゴリーに分けて考えている。

第1のカテゴリーは、ビジネスの成功のためにすべきことを教えてくれるもの。第2のカテゴリーは、すべきでないことを教えてくれるもの。2つの区分の境界線は曖昧になることも多いが、両方のカテゴリーの本を読むのがいいだろう。貴重な時間やリソースを無駄なことに費やさないためにも、ビジネスの立ち上げという刺激的な仕事を苦しみの連続にしないためにも。

実は、第3のカテゴリーもある。伝説的な企業や国家のリーダーが、物事をどのようになすべきかを身をもって教えてくれる本だ。こうした本は普通、多岐にわたるビジネス課題や予測不能な事態を扱うため、一般論になりがちだが、漠然とした形ではあれ無限の可能性も示してくれる。実践的なアクションプランが用意されているわけではないが、大局的な見識を得るために一読の価値はある。

ここに挙げる本の多くは、しばらく前に書かれたもの(中には前世紀のものも)なので、2000年台に登場した、まったく新しい産業や技術はほとんど、あるいはまったく触れられていない。それでも、主だった考え方は現代のデジタル世界にも十分当てはめることができるため、今の目で見ても意義がある本だ。我々は新しいテクノロジーの時代に生きているが、人間の本質は変わっておらず、人々は同じ間違いや似たような間違いを繰り返しがちだ。ただ、すべての人が間違いを繰り返すわけではない。適切に物事を行う人々もいて、そうした人々の会社が広く認知され敬われるリーダーとなる。誰もがそうなって欲しいというのが私の願いだ。

では、本題に入ろう。(この記事も、紹介されている本の方も!)読んで楽しんでいただければ幸いだ…

ジム・コリンズ(Jim Collins)著『ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則』(Good to Great: Why Some Companies Make the Leap…And Others Don’t

詳細(※訳注:リンク先の日本語版は、原書の表紙デザインと異なる場合があります)

ビジネス関連の私の蔵書の中で、最も重要な本といえるだろう。シンプルな言葉で、ふんだんな実例を挙げ、さまざまなリーダーに共通して見られる性質を納得のいくやり方で分析している。前述の第1のカテゴリーに属する、「いかにしてビジネスを成功させるか」を述べた本の1つだ。

単なるビジネス書というより、きわめて重要な先駆的な論考と呼んだ方がいい。大傑作だ。大人数のチームが丸5年の歳月をかけて丹念に行った調査を元にしていて、精密科学の分野に入れることもできる。それほどのビジネス書はそう多くない。

本書では、優れた企業、中程度の企業、業績の芳しくない企業を取り上げ、それらの企業の共通点と相違点を分析している。たとえば、優れた企業がしたこと、しなかったこと、中程度の企業、業績の芳しくない企業がしたこと、しなかったこと、などだ。

成功のための処方箋はどのようなもので、破綻の兆候を示す材料は何か?蓋を開けてみると、結果は実に単純だ。成功企業は次のような性質を持っていた(そして失敗企業は持っていなかった)。

  • 「第5水準の経営者」:必ずしもカリスマ性のあるビジョナリーである必要はなく、むしろその反対で、謙虚で勤勉な人材
  • 「まず人を選び、目標はその後:まず適切な人材をバスに乗せ、目的地はその後に考える。適切な人材を見つけ、さまざまな役職に就かせてみる」
  • 「ハリネズミの概念:3つの円。心に火をつけるものは何か(「情熱」)?世界一になれるのは何か?お金を生み出せるのは何か(「経済的原動力」)?」
  • その他。あとは実際に本を読んで確かめていただきたい。

この本に書かれている成功するリーダーや企業の性質が、自分や自分の企業に当てはまると判断できるなら、おそらくその人は成功企業を率い、充実した人生を歩むことになる(あるいはすでにそうなっている)だろう。当社も、本書に書かれている成功の処方箋に当てはまる部分が多々あると感じたし、ありがたいことに実際の成功につながっている。読者の皆さんや就業先の企業も多くの点で当てはまるといいと思う。楽しい(そして知的刺激に満ちた)読書を!

本書が批判を受けている点:

  • 公開企業のみを比較対象とする方針を取っている。非公開企業は行動様式がまるで異なるため、対象外としている。目標設定、計画、組織構造などに関するアプローチが異なるからだ。
  • インターネット企業は、ついでに触れられている程度。上記の方針を取っていることから自ずと説明できる。

それでも、本書から得られる知見は、工場、スーパーマーケット、ドラッグストア、航空会社といった従来産業に属さない企業でも活用できるだろう。インターネット企業にも、ここに挙げていない分野の企業にも役立つはずだ。さらに政府機関も、本書で述べられている原則を採用して業務の改善に役立てられるのではないかと思う。

クレイトン・クリステンセン(Clayton M. Christensen)著『イノベーションのジレンマ』(The Innovator’s Dilemma: When New Technologies Cause Great Firms to Fail

詳細(※訳注:リンク先の日本語版は、原書の表紙デザインと異なる場合があります)

本書は、ビジネスの世界が実際にどのように動いているのかに関心のある人にとって特に面白い本だ。本書の内容の大部分は、どのように仕事を「すべきでないか」にあてられている。古い安定した企業が徐々に若い企業に圧迫され、しまいには単なるニッチプレーヤーになったり完全に消えてしまったりする例がいくつか挙げられている。こうした事例では、優位にあった企業は一見すべて正しいやり方をしているように見える。最新の技術を取り入れ、さまざまな嗜好に合わせた製品を作り、顧客を満足させ、投資家を満足させ、メディアからも称賛されていた…ところがその後の急展開。気づくといつの間にか、進化の担い手ではなく傍観者の立場に追いやられているのだ。

本書の宣伝文句はこうだ。

会社経営をしていると、「一体何が起きているんだ?!」という単純な疑問に直面することがよくある。その答えを見つけるのに本書が役立つことが多々あるだろう。本書は、技術開発に投資し顧客ニーズに応えていた優良企業が、それにもかかわらず、急激に落ち込み、苦戦し、競争に負けることになった顛末についての本だ。キーワードの1つは「破壊的技術」。今後誰かが「破壊的」な何かについて話すのを聞くたびに(実際、「破壊的」な何かは事実上ありとあらゆるところに存在するので、そういう言葉を聞いたり読んだりする機会は頻繁にあるはずだ)、本書の著者クレイトン・クリステンセンに、この言葉を流行らせてくれてありがとう、と言いたい気持ちになるだろう。

本書で特に興味深い点は、まったく異なる業界(たとえばIT、鉄鋼、機械工作)のさまざまな企業のさまざまな話が紹介されていること、そしてどれもが驚くほど似たような道筋をたどることだ!

ほとんどすべての事例が、基本的には次の筋書きどおりに進む。

  1. 市場がある。
  2. 小規模の新興企業が多数現れ、市場が膨れ上がる。そうした新興企業は、余分なもの、少し違うもの、すなわちまだ需要のない製品や技術やサービス(本書はこれを「破壊的イノベーション」と呼ぶ)を提供する。
  3. 需要を創出した新興企業は、徐々に新しい市場を形成する(この現象については『ブルー・オーシャン戦略』(下記参照)でも述べられている)。

その結果、新興企業は「先輩方」から小規模でうまみのない低収益ニッチセグメントを奪い始める。それから市場の下位セグメントを奪う。その下位セグメントは通常、ほとんど大企業の興味を引かない。低収益で、手間がかかり、通常何らかの原始的、あるいはうまみのないマイナー商品に対する需要からなる市場であり、市場リーダーとして認知された企業のエンジニアがわざわざ時間を割いて注意を向けるほどのものではないからだ。

その後、新興企業はサービスや製品を絶えず改良しながら勢いを増し続け、やがてある時点で気づくと、新しい破壊的イノベーションが新しい別個の分派を形成している。最もうまみのある顧客、すなわち最高のものしか欲しくない裕福な企業を満足させる分派だ。こうして、新興企業はやがて市場の上から下まですべてを制覇する。このような過程はまったく理にかなっていて、避けることは不可能だ。

そのうち、昨日までは輝かしいほど画期的に見えた新興勢力が、破壊的技術の次の犠牲者、容赦のない技術革新の犠牲者となっていく。

新興勢力は徐々に最上階(最も高収益でうまみのある市場セグメント)に押し込まれるが、常に下からの圧力にさらされ、そこで破綻し、消えてしまうことが多い。そしてこのパターンが何度も何度も繰り返される!新たな勢力が興り、今や旧勢力となったかつての新興勢力を押しやり、それからまた…ということが無限に続く。

私見では、本書は現在のIT企業の状況をうまく言い当てていると思う。この業界は変化が非常に速いからだ。この業界では「イノベーションのジレンマ」は単なる命取りではない、即死につながる命取りだ。

マイケル・ハマー(Michael Hammer)&ジェイムズ・チャンピー(James Champy)著『リエンジニアリング革命―企業を根本から変える業務革新』(Reengineering the Corporation: A Manifesto for Business Revolution

詳細(※訳注:リンク先の日本語版は、原書の表紙デザインと異なる場合があります)

現代の有名大企業がたどる成長の軌跡はたいていこうだ。最初は家族経営の商店、ガレージのスタートアップ、あるいは会社分割後のスピンオフ企業として設立される。事業規模が大きくなり、顧客の数も増える。売上高は当初数千ドル規模だったものが、やがて数百万ドルになり、さらに数千万ドル、数億ドル規模になり、はては数十億ドルに達することもある。誰も聞いたことのない新興企業から、中堅企業となり、やがて(幸運または有能なら)巨大多国籍企業となる。

会社が大きくなる過程で、組織構造、プロセス、商習慣が生まれる。こうしたプロセスは初めのうちうまく機能する。それも当然だ。そもそも会社を成功させたのは、これらのプロセスや技術なのだから。だがその後、うまく機能しなくなってくると、プロセスや技術に不具合が起き、顧客を(最も忠実な顧客でさえ)少しずつ競合他社に奪われ、市場シェアが下がり始め、時には倒産にまで至る。これと同じことは現にたくさん起きている。

何が起きたのだろうか?何が悪かったのか?誰のせいで、事態を好転させるにはどうすべきなのか?

本書で答えを出しているのは、こうした疑問に対してだ。実のところ、「誰のせいか?」という疑問と「どうすべきか?」という疑問はリンクしている。前者の答えから自ずと後者の答えが導かれるからだ。たとえば、会社が変化に対応する必要があるとする。具体的にどのような変化をどのように組み込むべきかは、その会社の事業や業種によって変わる。だが変化ということ自体は必須だ。変化しなければ、停滞と、やがて来る消滅を待つしかない。

一部引用して紹介(ロシア語から訳し直したものなのでその点ご承知おきを):

「ここではリエンジニアリングに着手する企業を3つの種類に分けた。

第1のタイプは、深刻な問題を抱えた企業。このタイプの企業にとって、リエンジニアリングの他に選択肢はない。

第2のタイプは、今後問題が起きるだろうと経営陣が予測した企業。

第3のタイプは、業績が非常に好調で、短期的にも長期的にも問題がないが、経営陣が長期的な目標を設定し、その達成のための実践的なポリシーを設定した企業。

…あるいは別の言葉で言えば、私が普段から言う「スープをおいしくするには、かき混ぜろ」ということになるだろう(笑)。

今思えば妙な気もするが、当社(Kaspersky Lab)は2000年台初頭には確実に「第1のタイプ」だった。質の高いアンチウイルスエンジンは持っていたが、製品と呼べるようなものをまだ生み出していなかったのだ。断固として、時には苦しみながら、研究開発のアプローチを抜本的に変えなければならなかった。そこここで細かい調整を加えるだけでなく、開発プロセスの見直しや製品のコードの書き直しなど、ゼロからやり直さなければならないこともあった。非常につらい過程だった。それ以来、「第3のタイプ」である方がずっといいと思っている。

シドニー・フィンケルシュタイン(Sydney Finkelstein)著『名経営者が、なぜ失敗するのか?』(Why Smart Executives Fail: And What You Can Learn from Their Mistakes

詳細(※訳注:リンク先の日本語版は、原書の表紙デザインと異なる場合があります)

とても面白い本で、ミステリーのような読み心地だ。数百万ドル(時には数十億ドル)の損失や倒産につながった世界的(時には致命的)な企業危機の事例を分析している。Iridium、Samsung Motors、Enron、DeLorean、Barings、ドットコム企業などが対象となっている。大失敗に終わった合併買収案件(ソニーとColumbia Pictures、Daimler-BenzとChrysler)についての考察もある。

それぞれの事例は一つ一つ違うが、著者は綿密な調査を通じて、さまざまなケースで同じ間違いが繰り返されていることを発見したという!そしてその間違いとは、マネージャーの手腕不足でも、リソースの不足でも、業務怠慢でも、お粗末な実装でもなかった。その正反対だ。というのも、企業のトップにはたいてい有能な取締役やリーダーやビジョナリーがいて、リソースは豊富にあり、全社員が最大限に能力を発揮していた。それにもかかわらず…危機に陥ったのだ!

問題は別のところにあった。経営陣の特定の行動様式だ。市場について正しい判断を下さなかった。あるいは、とっくに様変わりした市場に古い手法を当てはめた。誤った情報に基づいてリソース負荷の高いプロジェクトに着手した。個人的な野心のために適切な判断力を欠いていた。また、詐欺行為もかなりあった。要するに、どのような場合でも、最終的には船の運行に責任を負うのは船長と一等航海士だということだ。

本書は余分な記述が多いと感じるところや、構成がわかりにくいと思う点はあるが(いわばオーブンで焼きあげたパイというより生のひき肉という感じで、もう少し「料理」が必要だと思う(笑))、お勧め本であることには違いない。

追伸:

少しだけ中身を紹介しよう。本書には「失敗するトップの七つの習慣」(Seven Habits of Highly Ineffective People)という章がある。破綻した企業のマネージャーについて書かれた部分だ。役員だけでなく、オーナー経営者にとっても、興味深い内容だと思う。自分の選んだ役員が会社の運営を任せる人物として適任かどうかを判断するのに使えるからだ。

追追伸:

詳しくはこちらにも書いている。

W・チャン・キム(W. Chan Kim)&レネ・モボルニュ(Renée A. Mauborgne)著『ブルー・オーシャン戦略競争のない世界を創造する』(Blue Ocean Strategy: How to Create Uncontested Market Space and Make the Competition Irrelevant

詳細

本書では、「レッドオーシャン」と「ブルーオーシャン」という巧みなたとえを使って状況を説明している。

レッドオーシャン(赤い海)とは、さまざまな規模の企業が押し合いへし合いしてパイの取り分を奪い、保持しようとしている従来の市場を指す。ここでは、生き馬の目を抜く残酷で苛烈な競争が繰り広げられ、トップに居続けることは難しいと誰もが感じている。ブルーオーシャン(青い海)は違う。ブルーオーシャンは、少し前には存在していなかったまったく新しい市場のことで、一握りの会社、あるいは初めは(そのオーシャンを考え出した当の)1社しか参加していない。広く深い海を使うことができ、自分のルールを作ることができるのがその1社だ。

レッドオーシャンは、大勢の利用者に人気がある、有名な製品やサービスだ。ブルーオーシャンは、突如として(事実上)何もないところから現れた、過去には存在しなかった(需要がなかった)画期的な技術または製品だ。たとえば、シルク・ドゥ・ソレイユT型フォード、Microsoft製品。他にも、新製品が独自の(新しい)需要、つまり需要のブルーオーシャンを作り出した例が挙げられている。

最初の数十ページに、さまざまな「オーシャン」の定義と例が書かれている。残りのページは、私にはよくわからなかった。また、ブルーオーシャンを作り出す、見つけ出すための(つまり大金を稼ぐための)戦略について述べると書いてあるのに、そのような内容は見当たらないので、驚きもしたし、途方にもくれた。まあ、著者らがその「秘訣」を本当に知っているのなら、その名前が本書の表紙だけでなく世界の長者番付にも載っているだろう。

とにかく私としては、第1章は読むことを強くお勧めするが、時間が惜しい人は残りの部分は読まなくていいと思う。

ナシーム・ニコラス・タレブ(Nassim Nicholas Taleb)著『ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質』(The Black Swan: The Impact of the Highly Improbable

詳細(※訳注:リンク先の日本語版は、原書の表紙デザインと異なる場合があります)

本書では、世界は大きく2つの部分に分かれると述べている。

1つ目は、予測可能で、理論上、異例のことは何一つ起こらない世界。たとえばカジノだ。あまりにも賭け金の高い賭けは初めから制限されている。1回で100万ドル勝つということはそもそも起こらない。1つのカジノで100万ドル勝つチャンスを得るには、一生の間ずっとそこで賭けをし、かつとても幸運でなければならない。

2つ目は、すべてを劇的に変えてしまう、まったく予想外の出来事が起こり得る世界だ。たとえば、Facebookのようになる企業もあるが、まったく同じような(あるいは少なくとも似ている)数百(あるいは数千)の企業が跡形もなく消えていく。

本書は、いかに人間が(個人、社会、企業、あるいは国として)予測可能な世界の法則にできる限り従って生きようとしながらも、予測不能の世界、つまり「ブラックスワン」の世界に陥ってしまうことがよくあるか、についての本だ。ブラックスワン的な出来事とは、大きな影響力を持つ驚くべき出来事を指す。たとえば世界経済危機、特定の本や映画の爆発的なヒット、科学の根幹を揺るがす大発見、ガレージから始まった(コンピューターやインターネットの)スタートアップが巨大企業になることなどだ。ブラックスワンの世界にいることに気づいた人間が、自分の知っていることに依拠するのではなく、むしろ自分はあまり多くのことを知らず、ブラックスワンに出会った後でようやく知るに過ぎないという事実に依拠する必要がある、と本書は説いている。

だから、この世界について知り、法則を理解したいと考える人にお勧めの本だ。ただし私見では、この種の多くの本(今回紹介する本の大半もそうだ)の例に漏れず、情報を多少ふるいにかける必要はある。この著者は時々話題が逸れるし、考え方が少々込み入っていて理解しにくい、あるいは説得力に欠けると感じるところがある。

本書に関して面白いのは、読んだ後に、金融アナリストやエコノミスト、社会学者といった人たちが皆とんだ食わせ物に思えてくることだ!この著者は他にも…フランス人(!)や……ガウス関数正規分布)が嫌いなようだ(笑)。また、長年にわたり人類学の研究をしている人という印象を受けるが(私は普段あまりそういう著者のものは読まない)、実際には数学の教授だという。それはさておき、楽しい読書を!

1つだけ、著者の…独創的な考えを示す部分(ロシア語から訳し直したもの)を引用して紹介する。

「ビジネスパーソンの中には、自分では専門家だと思っているが、実際にはまったくそうでない人もいる…そういう人はたいていネクタイを締めている」

—-8<—-

ではこの先は、冒頭で説明した第3のカテゴリーの本を3冊紹介する。評価の定まった成功者、著名人、ビジョナリー、ワーカホリック、天才、幸運児が、どのようにして物事を成し遂げたか、そして読者も…成し遂げることができる(かもしれない)かを教えてくれる本だ。

リチャード・ブランソン(Richard Branson)著『やればできる―人生のレッスン』(Screw It, Let’s Do It: Lessons In Life

詳細(※訳注:リンク先の日本語版は、原書の表紙デザインと異なる場合があります)

聡明で快活な著者が個人の経験から「人生の法則」を語る本で、読みやすい形でまとまっていて実に面白い。私はもちろんブランソン卿の物事のやり方は素晴らしいと思っているし、当社の経営スタイルにも共通する部分が数多くあると思っている。また、面白がること、楽しんで仕事をすることがビジネスの成功にとって不可欠であると強く信じてもいる。目標を高く持ち、障害を恐れないことも重要だ。さらに、お金そのものは最終目標ではなく、良い仕事、興味深い仕事、実りある仕事のありがたい副産物として生まれるものに過ぎないという考えにも賛成だ。

リー・クアンユー(Lee Kuan Yew)著『リー・クアンユー回顧録―ザ・シンガポール・ストーリー』(From Third World to First: The Singapore Story – 1965-2000

詳細(※訳注:リンク先の日本語版は、原書の表紙デザインと異なる場合があります)

シンガポールの経済的奇跡の立役者による回顧録だ。

私見では、リー・クアンユー氏は20世紀で最も偉大な人物の1人だと思う。政治家の理想像、世界の指導者にとって模範となる人物ではないだろうか。シンガポールは40年足らずで、問題だらけの場所から、東南アジアで最も発展した産業中心地の1つとなった。本書では、シンガポールの変貌の過程と、その変貌を指揮するために元首が行ったことについて語られている。といっても、政治家の単なる回想録ではなく、認知を得て成功を収める方策についての経験談もあり、非常に有用だ。

ウォルター・アイザックソン(Walter Isaacson)著『スティーブ・ジョブズ』(Steve Jobs

詳細(※訳注:リンク先の日本語版は、原書の表紙デザインと異なる場合があります)

600ページを超える(日本語版は400ページ超)、スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏の公式伝記。私自身、出版されてからさほど間を開けずに簡単な感想をブログに書いている。

Appleが今のような会社になった理由がよくわかる、非常に興味深い本だ。IT業界の歴史と今後の展望に関心のある人、AppleとMicrosoft、Google、Samsungなどとの間の過去および将来の長期的な対立に無関心ではいられない人、「どのシステムが最強か」という永遠の議論(フォーラムでの聖戦)をウォッチしている人や実際に参加している人に強くお勧めする。

追伸:もしかするときっとこのリストには漏れがあるだろう。古いものでも新しいものでも、私が知らない本がきっとあるはずだ。一読の価値ある興味深い本をご存じの読者がいたらコメント欄でお知らせいただきたい!

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