2016年11月7日
ダーウィンの特許パノプティコン
当ブログをよくご覧になっている読者はお気づきだろうが、私は最近の特許トロールについてはとやかく言っていない。ここのところトロールは影を潜めているようだが、改心して真面目に世の中に役立つことを始めたのだろうか。お察しのとおり、答えは「No」だ。残念ながら、見るところを見れば、大胆不敵で信じがたい行為にまつわる話は連日ニュースになっている。大きく報道されないだけで、トロールのビジネスは健在だ。
この類いのニュースが他人事でなくなることもある。少なくとも我々にとってはそうだ。つい先日、データパケットのフィルタリング、正確に言えばファイアウォールに関する特許の被疑侵害を主張する訴状をWETRO LANから受け取った。何だと?
彼らが主張するには、そこら中で使われている周知のデバイス、それも10年以上も前に発明されたものに対して、特許を取れるのだという。念のために補足すると、当該テクノロジーはこの特許が現れる前から長年当たり前のように使われてきた。それを今、彼らは自ら主張するところの「特許テクノロジー」の使用料を要求している。ちょっと待て、どういうことだ?!
そう、これが彼らの「ビジネス」だ。2015年から60社以上の企業に対して、彼らは訴訟を起こしてきた。訴訟の対象となった企業の多くは、この特許が存在するずっと前にファイアウォールを開発した企業だというのに。だが、業界は一連の訴訟に対して冷静な態度を見せ、この特許を最もばかばかしい特許の月間賞(Stupid Patent of the Month)にまで選んでいる。
同じくらいくだらないのは、WETRO LANが当社を標的に選んだことだ。当社がこの種の攻撃の「いいカモ」であるはずがない。いつだって特許トロールに断固として立ち向かい、屈したことなど決してない。根も葉もない疑いを示談で解決したこともないのだから。時々応戦はするが、まあ当然だ。彼らの特許は間もなく取り消されるだろうから、鉄が熱いうちそこにあるうちに打つのだ。とことん戦い続けようではないか。相手の弾がなくなるまで。
だが、この種の戦いの話は、どんなに必要だとしてもちょっと多分に不愉快なものだ。そこで、気分を盛り上げてプラス思考でいるために、埃をかぶった古い記録の中から、最も奇妙で、奇怪で、どうかしていて、矛盾に満ちた特許を掘り起こしてみることにしよう。皆さんがいつか「トンデモ特許法侵害」の当事者になったとき、彼らがどこに食いついてくるか、ポイントがわかることだろう(笑)
では、早速…
独断と偏見による過去最高に[適切な言葉を入れてくれ]な特許トップ5
第5位:一刀両断 – 悩みの種の最善策
暑くて晴れた夏の日はいいことばかりではない。夏と言えばビーチ、トロピカルなカクテル、水着がお決まりだが、それをエンジョイするには引き締まった体でなければならない。だが、秋冬春と高カロリー食品を貪り続けた後にどうすればいいと言うのだ?無理だ!きちんとした食事をとり、エクササイズをすれば不可能ではないだろうが、そのやり方は平凡で庶民的で時代遅れではないか?もっとハイテクでなければ。21世紀は目と鼻の先なのだから、と登場したのが…
こちらだ。米国特許4344424の「飲食防止マスク」をご覧いただこう。ハンニバル・レクター(Hannibal Lecter)のおでましだ!
PS:飲食防止手錠を「発明」して特許を取るのもアリでは?鎖でラジエーターにつないで冷蔵庫に手が届かないようにするのだ。2週間もすればビーチ向けの体を手に入れることができるだろう(笑)
第4位:パブでは必ずおかわりを
これは単にくだらないだけでなく、実にくだらなくて、個人的には3重にくだらない…
この発明品はビールを日差しから守り、広告にも利用できるという代物。
反論その1:ビールがぬるくなるまで日差しにさらされることを心配するより、さっさと飲んでしまった方がいいだろう。違うだろうか?
反論その2:この、アンブレラならぬビアブレラのせいでビールが飲みにくくなる。従って、ビールがぬるくなるのを助長するのは明らか。気は確かか?
反論その3:ビアブレラに印刷された広告に気づくとは思えない。気づいても、広告の製品は断固ボイコットだ。
皆さんの意見は?私は辛口すぎる?「支持者」はいるだろうか?
PS:気になるのだが…たとえば「蜂蜜酒ブレラ」を作ったとしたら特許侵害になるのだろうか?
第3位:「取ってごらん!ハハッ、取れないか、ざんねーん!」
下の画像から判断するに、この特許5443036ではジェダイ式の異星人狩りの方法が発明されたと思われても仕方がないが、この発明品にはもっと人道的な目的がある。しかも世界共通の。
このレーザーポインターは、猫に運動させるためのものだ。猫がレーザースポットの後ろを追いかけて走るのだ。ということは、レーザーポインターを作っているあらゆるメーカーはこの特許の使用料を「発明者」に支払わなければならないかもしれない。どんなレーザーポインターでも猫の運動用に使えるのだから。何という理屈だ!
PS:ハムスター用、うさぎ用など、地球上のあらゆる動物用のレーザーポインターを急いで発明しなければ。どうだろう?
第2位:ビーチでの居眠りに備えて
こちら:
危なかった!人類は救われた。これが発明されるまで、世界は危険に満ち満ちて見えたに違いない…
特許6711769は、枕と傘のセットだ。ビーチで居眠りしても顔に日差しが当たらないように遮ってくれる。ただし、守られるのは顔だけだ。使用法をきっちり守って使ったとしても、ビーチで居眠りなどという危険な行為には害が伴ったままだ。
第1位:ここに「発明品」を挿入
特許6368268は、ぶっちぎりのナンバーワンだ…。
そう、この図は「性的欲求を満たすためのコンテンツをデジタルコンピューターネットワークでインタラクティブに仮想制御する方法とデバイス」を表している。いや、冗談ではなく本当だ。離れていても…親密な交流が可能!特殊なアプリケーションを使って接続を確立し、コンピューターにさまざまな制御デバイスを接続すれば、ユーザー同士がつながるというわけだ。
この特許に関する公判を、ありありと想像できる。弁護士、裁判官、陪審員が何とか真顔を保とうとしている姿を。この特許の所有者は、特許権侵害ですでに6件の訴訟を起こしている。
PS:「入力デバイス」と「制御デバイス」だって?笑わせてくれるじゃないか。
ボーナストラック:ヨガマットの上で墓穴を掘る
こちらは、「驚きのテクノロジー」の特許を取ることにいかに必死かを表している。必死になるあまり、まったく的外れであることにさえ気づいておらず、ごくごく単純な考慮もできていない。
8605152をご覧いただこう。「ヨガ教室を撮影してストリーミングするための方法と装置」だ。
インストラクター、生徒、ビデオカメラの位置は以下のとおり。
問題は、こういった方法でヨガ教室をビデオに収めることに、特許優先日時点でも目新しい価値がまったくなかったことだ。それは、特許所有者自身が優先日よりも前に「特許」の方法で撮影したクリップをYouTubeで公開していることからも明らか。しかも1年も前にだ!
本件に関する訴訟の標的となってしまった人は、特許所有者自身のYouTubeビデオに言及すればいいだけの話だ。いや、何とも…。
最後に
では、このような「発明者」は何を目的に、その「発明」の特許を取るというとんでもない行動に走るのだろうか。箔を付けるためなのか、他人の偉業を並べあげるためなのか、自分のビジネスの価値を高めるためなのか、それとも他に目的が?矛盾に満ちた意味のない特許は膨大な資金と時間を食い潰すだけで、何も生まないし無駄でしかないというのに。あるものをただ認めるだけでいいのに、あえて奇人変人の仲間入りをしようとするのはどういうわけだ?なぜ?
一方で、金曜の夜にビールでも飲みながら、特許データベースを開き、中身をネタに友人たちと盛り上がることもできる…ビアブレラなしで。もしや、これこそが目的なのかもしれない…