2013年11月1日
特許トロールに圧力を
「予防は治療に勝る」というが、これは特許トロールとの戦いにも当てはまる言葉だ。
私たちはこの格言を胸にDevice Security LLCを告訴し、モバイルデバイスのデータ保護に関する技術を対象とした特許の無効と非侵害を主張している。特許トロールたちとは8年にわたって戦ってきたが、予防的先制攻撃に打って出たのは今回が初めてだ。
では、私たちが戦略を変えたのはなぜか?
第1の理由: 特許トロールに対して受け身になると、戦略的に不利になる。この戦いに勝利するためには、相手のビジネスの基盤を打ち崩すしかない。IT業界には特許トロールよりもはるかに多くのリソースがあり、早期に団結して特許トロールに圧力をかけた方が、長期的には費用も安く済む。やはり、特許トロール側が勝利を重ねるたびに、正義が悪に勝利するための代償は大きくなっていくのだ。特許訴訟でトロールと和解したところで、財布からお金が出ていくだけだし、問題を他の企業に押しつけることになる。巻き添えを食らうのはあなたの会社かもしれない。愚かなことだ。
理由その2:原告がルールを決める(裁判が行われる場所など)。これによって成功の可能性が大きく高まる。
その3:特許トロールのビジネスが人の道を外れているからといって、特許トロールを意気消沈させることが不可能ということはない。心理的に揺さぶり続ければ、特許トロールのつらの皮も薄くなっていくというものだ。やがて特許トロールは以前よりずっと慎重に準備しなければならなくなり、(これが重要なのだが)特許トロールが負担する費用も高くなっていく。もう簡単にお金を与えてはならない!ここでまた特許トロールの経済基盤の問題に戻る。
その4: 軍事作戦と違って、特許トロールに対しては守りを固めるよりも攻撃をしかけた方が安い。しかも速い。
その5: 中身のない特許を無効にできれば、何十社、いや何百社というIT企業を守ることにもなる。そうした企業の多くは特許訴訟の費用を工面することができないので、裁判になる前に和解せざるを得なくなり、その結果トロールに少額ながらお金を与え続けることになってしまう。
最後にその6: 待つ必要などない。Device Securityはすでに自社の特許を収益化しており、各社に大量の書簡を送りつけている。さらに、同社の特許は穴だらけで荒唐無稽であり、おおざっぱで狭い計算に基づいている。そして、いつも驚かされるのだが、どうしてこんなものを独創的だと主張して、「新規性」と「進歩性」があると米国特許庁に認められているのか。だが、ともかく、私たちはそれが偽りであることの証拠を手に入れた(詳細は後日)。
では、まとめとして、私たちの尊敬すべき敵についての調査書を紹介する。
Device Security LLCは、巨大特許トロールWi-LANの触手の1本だ。Wi-LANが革新的な企業を訴える際に好んで選ぶのが、フロリダ州の裁判所である。簡単に公判を早めて、被告企業に深刻な圧力をかけられるからだ。また、訴訟手続きの規則がそれほど厳しくない他の州に裁判を移送できないよう、フロリダに子会社を設立した。
Wi-LANの歴史は悲しくもあり、内奥をうかがわせるものでもある。
同社の創業は1992年。それから10年余りは、時々は特許に手を出していたものの、誠実に無線技術の開発に従事していた。しかし、時が経つにつれてどんどん卑しくなっていく。2000年代半ばに株主との争いが起き、同社の業態は大きく変化することになる。もちろん、「特許ゆすりのように簡単でリスクがなく、法律で儲ける手段があるのに、馬鹿正直に製品や技術の開発などやってられない」と考えたのだろう。
なんというか、まっとうなビジネスでうまくいかなかったので、特許トロール主義に逃げて静かに稼ぐことにした、という感じだろうか。
Wi-LANはその後、Ciscoを相手取った特許訴訟で大勝利を収め、濡れ手で掴んだ粟の味をしめる。そのときから、過去を顧みることはなくなった。技術開発を重視しなくなり、他社の特許を買いあさるビジネスに路線変更し、完全なるトロール主義の会社になっていった。長年低迷していた売上は突然上がり始める。2008年は2,660万ドル、2009年は3,510万ドル、2010年は5,070万ドル、そして2012年には業界から9,000万ドルを搾り取った(すべてカナダドル)。2013年の同社の特許ポートフォリオは3,000件以上に及び、約300社の被害者ライセンシーの良心につけ込み、香港、日本、台湾にオフィスを構え、子会社やダミー会社も所有している。
ともかく、私たちはこの特許トロールの楽な生活に深刻な打撃を与えるつもりである。フロリダで彼らと間もなく相まみえるのが待ちきれない。進捗はTwitterでお伝えする予定だ。質問や提案があればこちらまでメールしてほしい。