ダボスのスキー場から人が消える1週間

※元の英語記事は2015128日に公開されました。

私にとって、冬の朝に一番頭がすっきりとして、気分が盛り上がってくるのは、こんなときだ。身を切るような寒さの中を早足で散歩していたら、陽気で楽天的なバグパイプの音が聞こえてくる…

DSC05236 実際のところ、もっと頭をすっきりさせてくれるものはある。地震だ。日本に行ったとき、地震で目が覚めたことがあった。確かに頭は冴えてくるが、気分が盛り上がるかと言うと…

幸い、このスイスアルプスの小さな町、ダボスでは地震はない。だが、空気はとても冷たく、奇妙なことに、バグパイプが心地よい音色を奏でている。もっと長く聞いていたかったが、次の会議に向かわなければならなかった…

今年のダボス会議は、少し仕事中毒気味のように思える。朝の7時半から開始というイベントもあるのだ!信じられない。まるで悪夢だ(私のような夜型人間にとっては)。まあ、仕方ない。その時間に始めるというのだから、その時間に始まるのだろう。言いたいことはあるが従うしかない。だが、事務局にはもっとしっかりしてもらいたいところだ。来年はこんな狂気じみたスケジュールは御免被りたい。

興味深いことに、世界経済フォーラム年次総会が開催されているときのダボスは、世界一奇妙なスキーリゾートだった。

まず、ダボス周辺は、スキーやスノーボードに絶好の場所とはお世辞にも言えない。ルートはあまり多くなく、直線コースばかりで退屈だ。むしろ、ほとんど楽しめない。ツェルマット、ゼルデン、レッヒ、ドロミーティなどとは比べものにならないだろう…

davos-ski-wef-1あまりおもしろくない

davos-ski-wef-3つまらない

davos-ski-wef-4いまひとつ

しかし、好奇心をそそられる、ちょっと変わった特徴は、退屈さではなく、人影がまばらなことだ!普段は何千人というスキーヤーとスノーボーダーで溢れかえっているのに、ダボス会議の期間中は数十人くらいしか見かけない。明け方に雪上車がゲレンデへと向かうときに雪についた跡が、午後になってもまだ残っているのだ!ダボス会議の主催者たちが、スキーリゾートから「よそ者」を残らず締め出したと考えてもいいかもしれない。超VIPたちがやって来るからだ。ゲレンデから人がいなくなるのは、この町の物価が高騰するという理由もあった。天井知らずに何もかもが高くなるため、スキーヤーが寄りつかなくなる。無理からぬ話だが。それはともかく、我々としてはゲレンデを独り占めできたことがうれしかった。とても気持ちがいい。

davos-ski-wef-5退屈だ

davos-ski-wef-6さて、形容詞を並べるのはもうやめにする。写真を見ればわかることだ。

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一方で、ダボスという町には、まったく別の問題もある。町中がひどく混雑するのだ。ただし、やって来るのはスキー客ではなく、大統領、首相、大臣、CEO、報道関係者などだ。こういった人々が押し寄せてくるため、スキーヤーたちは締め出されてしまう。議論の余地がありそうな問題だ。

だが、要人たちはスキーヤーを追い出すだけではない。私や同行者のA. Shのようなダボス会議の出席者も追い出される。我々は町外れのマンション(文明社会の最果ての地、という感じもした)を借りなければならなかった。しかも、その週の家賃は小型車を買うよりも高かったのだ!

下の写真を見てほしい。リビング、寝室(もう1部屋もだいたい同じだ)、トイレとシャワー、廊下の写真だ。ドアの「土足禁止」という注意書きが気に入った。もちろん、ロシア人としては(靴を履いたまま家に入るのは考えられないほどの失礼にあたる)、賃貸マンションでこのルールにしたがって生活するのは大して難しくなかった。

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davos-ski-wef-12スキーがほとんどできなかったことは残念だ。ダボス会議の開幕直前に少し滑っただけで、その後は1週間にわたる体力勝負の「マラソン」が始まった。大手メディアから10回以上インタビューを受け、非常に興味深い会議(インターポールの新しい事務総長が参加した会議など)にいくつか参加し、握手、再会の挨拶、名刺交換は数え切れないほどやった。公開討論会もあった。

マンションから町の会場までは約1.6kmで、会議と会議の間に休憩があったため、毎日2、3回は宿泊先に戻った。それに、マンションへの最後の300mは急勾配の丘だったので、スイス滞在中にいくらか体重が落ちたような気がする(笑)

もちろん、用意されていたシャトルバスや、定期運行しているバスを利用してもよかったのだが、長年の経験から言わせてもらえば、たいていの場合は歩いた方が早く、簡単で、健康にもいい。周りの景色も、さえぎるものが何もない方がやはり美しい。写真を撮るにはうってつけというわけだ。たとえば下の写真は、各参加国の国旗のスカーフを巻いた雪だるまだが、バスに乗っていたら見落としていただろう。

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ダボス会議中は一部の国がこのような形で自国をアピールしていた。

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#davos India pavilion on World Economic Forum.

A photo posted by Eugene Kaspersky (@e_kaspersky) on

ここで少し、世界経済フォーラム年次総会の内情についてお話ししよう。

年次総会の運営の大部分は、FacebookやLinkedInに似ているが非公開の特別サイトToplinkで行われる。このサイトには参加者全員のリストがあり、各メンバーが他のメンバーにメッセージを送ることができる。商談をしながらの朝食、昼食、夕食、さらには会議、プレゼンテーション、討論会などへの招待も、すべてToplink経由だ。また、さまざまなセッションの日程もすべてここで公開され、世界経済フォーラムのニュースも掲載される。とても現代的な仕組みであり、非常に便利だ。表向きは会議に参加する大物たちのためのサイトだが、実際には彼ら自身が使っているわけではなく、アシスタントにやってもらっているのではないだろうか。それでも便利なサイトには違いないが(笑)

さて、2015年の世界経済フォーラム年次総会も無事に終了した。例によって空港に向かうところだ…

人影のないゲレンデの写真をもう1枚載せておこう。

#davos after few days of meetings with ministers and CEOs, speeches and interviews its so good to ski above the clouds!

A photo posted by Eugene Kaspersky (@e_kaspersky) on

1月のスキーに最高の場所は、なんとダボス!Tweet

写真はすべてこちらに保存している。

Auf wiedersehen!

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