ソーシャルネットワーク:その強力なるフォース

プロローグ

ソーシャルネットワーク(SNS)の歴史は、まるで映画「スター・ウォーズ」のようだ。そうだ! SNS の始まりは漠然としてミステリアスで、人々いわく「今はまだ予測できないが、大きな能力やビジネスチャンスを秘めた、新しいタイプの Web サイトで、将来は人と人が自由で平等に、真の意味でつながれるようになる!」というものだった。まさに、東洋の神秘思想に影響を受けたジョージ・ルーカス監督が描いた「フォースにバランスをもたらす者」だ。そして、そのとおりになった – SNS は理想のコミュニケーション手段になったのだ – 一般の人、企業、メディア問わずすべての人々にとって。

もちろん、こんな陳腐なあらすじでは、映画の大ヒットは望むべくもないだろう。そもそも、人々はそれからずっとしあわせに、皆が平等に権利やチャンスを得て暮らしました、というのが映画の始まりというわけにはいかない!?フォースの暗黒面による極悪非道な計画がひそかに進行しなければ、物語にならない。まさにそのとおり!現実でも、SNS はあらゆる世界の諜報機関が繰り広げる作戦と世論操作の舞台となっている。私が以前から繰り返し話しているとおりだ。

こうして、スター・ウォーズ:新たなる希望は終わりを告げ、次の物語が始まった。

帝国の逆襲

SNS を通じた「世論の形成」はここ数年、政策の伝統や傾向にかかわらず、多くの国の政府によって実際に行われている。人々は身の回りのニュースや興味のあること、自分の居場所、同僚や友人や職場の連絡先などを自ら公開しているので、深く探らなくてもオープンでフリー(無料)な情報はたくさんある。誰でも、つまり個人であろうと企業であろうと犯罪者であろうと、あるいはクロスステッチ刺繍サークルのメンバーであろうと、そのような情報にアクセスできるのだ。情報はほぼ誰にでも見えるところにあるし、人々は(度重なる警告にもかかわらず)情報をインターネット上にさらし続けている。一方で、SNS を縦横につなぐ多数の API による展開はすさまじく、ある日ひとつのネットワークにアップロードされた情報は、翌日には文字どおり永久に、検索エンジンにインデックスされるのだ。

同時に、諜報機関は自ら「ユーザー」になり、喜んで SNS に参加しているが、もちろん独自の意図があってのことだ。ネットワークは、一般の人にとっては主に情報源や読み物として、企業にとっては営業やマーケティングの情報源やツールとして利用されているが、諜報機関にとっては国家の利益を守る重要な手段であるとともに、潜在的な敵対者に対抗するための武器ともなり得るのだ。

つい最近も、状況の深刻さを再確認させる報道があった。ロシアの対外情報庁(SVR)が SNS を通じて世論の収集、監視、操作に着手したのだ。経済日刊紙のコメルサントによれば、今年初めに SVR は SNS の監視を行う複数の専用のシステムを開発するために 100 万ドル以上予算申請することを発表した(記事の Google 訳ロシア語記事原文)。これでロシアも SNS の国際スパイサークルに正規登録だ。米国や英国、イスラエルやその他の国には大分遅れをとったが、ともかく。

この報道は、それほどセンセーショナルではないかもしれないが重大だ。帝国軍のストームトルーパー部隊が共和国の中核を襲撃したのだ。我々が Facebook や Twitter で平和的かつ開放的に世間話をしていたら、帝国軍が目と鼻の先に兵舎を設置したようなものだ。

一体なぜ?

答えは簡単だ。21 世紀のサイバー戦争をするためだ。この戦争では、さまざまな勢力が情報と虚報(!)を駆使し、インターネットから情報を得ている大衆を操作する。その作戦はとても効果があるに違いないし、すでに見事に功を奏している。

SNS に流れるニュースフラッシュと、適切な文体で専門家の立場から述べられた投稿がひとつあれば、どんな問題についてでもほんの数時間で何百万もの人たちの受け止め方を根本的に変えてしまうことができるのだ。ぞっとするような速さだ。情報操作自体は何百年も前からあるが、こんな速さで効果をあげることはこれまでなかった!まさにこれこそが、帝国軍のストームトルーパーが SNS とその可能性について、これほど全力をあげて研究している理由なのだ。何十万の「ファン」またはボットを持つこと、大衆は何が好きで、何に即座に反応し、何をクリックするかをリアルタイムで分析可能であること、- それこそが帝国軍が求めるものだ。実際手に入れつつあり、こうした情報を活用することで彼らは、想定できるあらゆる状況において影響力を持つことだろう – 地球上どこであっても。そう、皆さん自身の国でも。

つまり、これが進化の行き着いた先だ。はじめは皆に解放されたインターネットパーティーだったが、永遠に続く戦いがここから始まった。ネットの一部は汚い競争心を煽る戦い(ネット荒らし)に明け渡され、政治的扇動やプロパガンダが蔓延した。現在、我々は傍観者として取り残されてしまい、新時代の情報プロパガンダ戦争の犠牲者となる可能性も無視できない。我々はすでにこの変化の最終ステージにいるようだ。というのは、インターネットの SNS はここ何年も、さまざまな政府に利用されているからだ。残念ながら、事態を進展させる脚本はひとつしかない。つまり…

ジェダイの帰還

各国の政府と諜報機関は、SNS への関わりをさらに深めている。その可能性と危険性に割合はやく気付いた国があり、他国もすぐに続いた。でも、それは本当の問題ではない。さまざまな形でソーシャルメディアには戦線が生まれ、攻撃や防御の動きが始まるだろう – こういう状況は、よく戦争と呼ばれる。今日は行き過ぎだとみなされている「中国モデル」(国外サイトへのアクセスが国家のファイアウォールで制限される)が、明日には簡単にふつうのことになるかもしれない。諜報機関は敵対者のソーシャルメディアによる活動を探り当てて自国からのアクセスを制限し始めるかもしれない。大げさではなく、このように事態は進展するのだ。

近い将来、ネットを取り巻く状況がヒートアップして、国がどの政治陣営であるかは大した問題でない状態になるような気がしている。どちらにしても皆が防御ばかりにかまけて、悪循環に陥ってしまう。政府は SNS の自由を擁護する一方で、諜報機関や国家扇動の代弁者が SNS をこれでもかと利用するのを認めるだろう。そうなると、他の国は対策を採らざるを得ない。こうして、SNS の自由が制限されていくのだ。

その結果、共和国は危機にさらされる。我々はジェダイの帰還によってのみ救われるだろう。それは全面的で純然たるコミュニケーションの自由と解放、つまり、「コミュニケーションする」自由と、コミュニケーションに対する「干渉からの解放」だ。この両方が必要なのであり、一方だけではうまくいかない。政治的な意図を持った情報操作はコミュニケーションの自由という概念そのものを歪め、SNS は国家のファイアウォールで囲まれた箱庭に閉じ込められたローカルなコミュニティと化してしまうかもしれない。

世界の軍事機関や諜報機関、その他の政府機関が SNS に干渉し、世論操作を行うことは、不適切でまずい手だ。それは、サイバースペースでの軍備競争をエスカレートさせ、サイバー戦争を煽るということなのだ。

そんなものは必要だろうか?私はご免だ。

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