自分の頭で考えるということ

企業に必要なのは、製品やサービスを販売する市場だけではない。リソースも必要だ。財務リソース、つまり資金。人的リソース、つまり社員。知的リソース、つまりビジネスのアイデアと、それを実現させる能力。そして一部の企業では(業界全体の場合もある)、また別のリソースが求められる。信用だ。

あなたが掃除機を買いたいと思っているとしよう。掃除機メーカーを信用している必要はあるだろうか。そうでもない。機能、見た目、品質、価格などを検討して、あなたが良いと思う掃除機を買えばいいだけの話だ。そこに信用はそれほど必要ない。

しかし、一部の業界、たとえば金融や医薬の業界では、信用が極めて重要な役割を果たしている。金融アドバイザーを信用していないのにそこのクライアントになったり、製薬会社を信用していないのにその会社の製品を買ったりするというのは考えにくい。あり得ないと言ってもいいかもしれない。そこで、金融アドバイザーや製薬会社は、顧客を獲得するために、自分たちが信用に値するということを証明していく必要があるのだ。

我々のビジネスであるサイバーセキュリティにおいても、信用は必須だ。必須というだけではなく、信用が成功を左右する。信用のないところに、サイバーセキュリティはない。そして一部の人々―今のところは「中傷者」とだけ言っておこうか―は、これをよく知っており、あらゆる手を使って、あらゆる理由を付けて、サイバーセキュリティの信用を破壊しようとする。

カスペルスキー製品の信頼性に傷をつけてやろうと企む輩がいれば、あなたも当社製品には何か問題があるのではないかと思うようになるかもしれない。しかし、製品の品質について言えば、私は何の心配もしていない。その理由は第三者機関によるテスト結果を見てもらえれば分かる。近年の変化は別のところにある。地政学的な問題が生じているのだ。我々はその真っただ中にいることを余儀なくされている。

プロパガンダ組織が立ち上がり、闇の策謀を我々に差し向けてきた。多くの人が、当社に関する根拠なき主張について読んだり聞いたりしたはずだ。こうした言説の起源の一端は、(検証不能な)「匿名の情報源」からの情報を引用するメディアの記事だった。そのような記事が出たのが、政治的な理由によるものなのか、何かの売上げを伸ばすための商売上の理由によるものなのかは分からないが、誤った非難を受け入れるわけにはいかない(他のいかなる不公正も許されないのと同じように)。だから我々は、向けられた主張の1つ1つに挑み、誤りを立証していく。私はここで意図的に、誤りを「立証する」という動詞を選んでいる(再確認しておきたい。我々を非難した人々の方は何も「立証」してはいないし、立証する必要もない。初めからやましいことは何もないのだから、立証できる事柄など存在しないのだ)。

ともかく、このような申し立ての最後の波が押し寄せてから約1年が経過したところで、私はこの件を自分自身で精査してみることにした。世界が我々をどう見ているのかを知り、そうした主張を目にした人々がそこからどのような影響を受けたのかを知るためだ。また、当社が事実を提示したことで、この問題について人々がどの程度まで自分の判断を下すことができたのかを見るためだ。

結果はというと…、人々が事実のみに基づいて判断すれば、喜ばしいことに、これら申し立てが通用することはなかった、と判明したのだ!OK、あなたの心の声に応えよう。「その証拠は?」

実にシンプルながら非常に価値のあるもの、それはGartner Peer Insightsだ。企業ユーザーたちの意見が収集され、そのプロセスをGartnerが詳しく調査して偏見、下心、釣りに相当する行為が存在しないこと確認している。要するに、重要な顧客から直接、透明性と信頼性の高い情報を入手できる。

昨年、お客様からのありがたいフィードバックのおかげで、Kaspersky Labは2017 Gartner Peer Insights Customer Choice for Endpoint Protection Platformsを獲得した。今年の結果はまだ発表されていないが、多くのお客様が当社製品の感想、全体的な評価、ポジティブなレビューを投稿しているのを見ることができる。このレビューを見ると、「レビュー生産工場」のようなところで報酬を得て書かれているものではないことが分かる。レビュアーは、さまざまな規模、業種、地域、力量の企業であることが確認されている。

そして地理的な問題についてだが、地域が違えば信用に対する考え方も異なることが分かった。

ドイツを例に取ろう。ドイツでは、企業の信用の問題が非常に真剣に受け止められている。それ故に、WirtschaftsWocheという雑誌が定期的に30万人を対象にして企業への信用度を調査し、結果を公表している。「ソフトウェア」カテゴリで(「アンチウイルス」や「サイバーセキュリティ」ではないことに注目してほしい)Kaspersky Labは第4位に付けている。当社への全体的な信用度は高く、地域を問わずほとんどの競合企業をしのぐ位置にいる。

我々は次に、政府が事実に基づいて企業を信用するか否かを判断するとどうなるかに目を向けた。例を挙げよう。11月の初めにベルギーのCentre for Cyber SecurityがKaspersky Labに関する事実を調査したが、当社に対する申し立ての根拠となるものは見つからなかった。その後ベルギーの首相が、当社製品が脅威であることを示す客観的な技術データ、まして第三者機関による調査などは存在しないとの発表を行った。個人的に付け加えさせていただく。理論的には当社製品が脅威となる場合がないとは言えないが、他のどんな国のどんな企業のどんなサイバーセキュリティ製品でも、事情は変わらない。なぜなら、理論上はどんな製品にも脆弱性はあるからだ。技術的な透明性を確保するための当社の取り組みを考えれば、他の製品と比べて当社製品が脅威となる可能性は少ない、というのが私の意見だ。

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サイバー古生物学:複雑なサイバー脅威へのアプローチ

やあ、皆さん!

今回は、著名な思想家の哲学的な言葉をもじって、こんなフレーズから始めたいと思う。「人間の職業がその社会的存在を規定するのか、それとも人間の社会的存在がその職業を規定するのか?」この(というか元になった方の)疑問は、かれこれ150年以上もの間、熱い議論の的となっているようだ。そしてインターネットの発明と普及を経た現在、この論争はどう考えても、少なくともこれから150年後まで続きそうに見える。私個人としては、どちらかの側に賛意を表明するつもりはない。むしろ、(私個人の経験から)職業と存在は二元構造になっているという考えを支持したい。人間の職業と存在は、さまざまな形で、継続的に、相互に影響し合う関係にあるものだからだ。

1980年代が終わりへと向かいつつある頃、悪意あるプログラムが急増する状況に対応すべく、コンピューターウイルス学が生まれた。それから30年後、ウイルス学は進化(というよりむしろ、隣接領域と融合)してサイバーセキュリティ産業となり、それが現在、しばしば「ITの発展を決定づけている」。競争が避けられない条件の下では、最高の保護機能を備えた技術のみが生存競争を勝ち抜くのだ。

1980年代の終盤から30年の間、我々(アンチウイルス企業各社)は、さまざまな名前で呼ばれてきた。華やかな名前もあれば、愉快でない名前もあった。しかし近年、最も言い得ていると思うのは、私見ではあるが、一部で流行している「サイバー古生物学者」という呼び名だ。

確かに我が業界は、大規模感染に対抗する方法を身につけてきた。事前対策的に(近年、最大級の大規模感染であるWannacryExPetrから人々を保護したように)か、事後対応的(クラウドベースの脅威データ解析と迅速なアップデートを利用して)か、という違いはここでは重要ではない。しかし、標的型サイバー攻撃については、業界全体としてはまだなすべき課題が多く残っている。そうした攻撃に対抗できるだけの技術的な成熟度とリソースを持っている企業はごく少数だ。さらに、本拠地や活動の動機を問わず、すべてのサイバー犯罪者を摘発するという揺るがない意志を持つ企業という条件を加えると、残るのは1社だけだ。そう、我が社だ!(それで思い出すのはナポレオン・ヒルがかつて言った「成功のはしごのてっぺんはいつも人が少ない」という言葉だ。)いずれにしても、当社が他社を引き離して単独で(はしごのてっぺんに)いるのは不思議なことではない。文字どおりあらゆるサイバー犯罪者を摘発しようという揺るがない意志を持ち続けるには、持ち続けない場合よりもはるかに多額のコストがかかるからだ。さらに、昨今の地政学的な混乱に鑑みても、そうした意志を持ち続けることははるかに厄介なことだ。だが、それが正しい行いであることは当社の経験が示している。ここからも、そうであることを確認いただける。

サイバースパイ活動というものは、実に多くの時間とコストを要し、ハイテクを駆使する複雑なプロジェクトだ。当然ながら、そうした活動の首謀者は摘発されれば大いに気分を害するだろうし、そうした首謀者の多くはメディアの操作によりさまざまな手段を用いて「望ましくない」開発元を排除しようと考える。また同様に、このように考える人もいる。

https://twitter.com/malwrhunterteam/status/1029276290900262913

話が脱線したようだ…

さて、そうしたサイバースパイ活動は、何年にもわたって検知されないままであることもある。首謀者は投資したものツールセットに十分な注意を払うからだ。たとえば、少数の厳選した標的のみを攻撃する(不特定多数に向けた攻撃は検知されやすいので行わない)、広く使用されている市販のサイバーセキュリティ製品全部でテストする、必要とあればすぐに戦術を変える、というように。多く標的型攻撃が検知されているが、それも氷山の一角に過ぎないことは想像に難くない。そして、そうした攻撃をあばく上で本当の意味で効果的な手段はただ一つ、サイバー古生物学の手法だ。具体的には、長期にわたり丹念にデータを収集して「全体像」を把握すること、他社のエキスパートと協力すること、異常を検知して分析すること、その上で保護技術を開発することだ。

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箱の中身はキクラデス時代からのサプライズ!

Γεια、皆さん!

その昔、地中海の島に古代文明があった。だが、現在のギリシャのサントリーニ島で栄えたこの文明は、突然姿を消した。どこへ行ってしまったのか、確かなことは誰にも分からない。文明は火山の大規模な噴火よりも前に崩壊しており、その名残はすべて噴火に飲み込まれてしまった。この魅力的な場所については、以前にも当ブログで取り上げている(2年前2回、その前にも1回)。古代の伝説、考古学上の驚くべき発見、途方もない仮説…サントリーニ島はそういう場所だ。

3600年以上前にミノア人が住んでいたこの島の都市は、3階建や4階建の家が建ち並び、本格的な排水設備を有していた。もっとも、「ミノア人」というのは当人たちが姿を消してから何千年もたった後に付けられた名前だ。彼らは本当のところ何者なのか、自分たちや島のことを何と呼んでいたのか、どんな言葉をしゃべり、書いていたのか、…こうしたことは今も謎に包まれている。

「ミノア」文明で残っているのは、古代都市の廃墟だけだ。家屋や通りの大半は、厚い火山灰の層に埋もれている。

これだけの理由があれば、サントリーニ島で発掘調査を実施するのに十分だろう。それもただ掘るだけでなく、これまでに発掘されたものをすべて復元し、保存するのだ。こうして約1年半(冬休みを除く)の作業を経て、このたび実に実に実に興味深いものが出土した!土器の箱だ。その中身は…とても興味深いものだと思うのだが…これがその箱だ。

では、何が入っていたのか?

「空だった」?いや。

中にあったのは…別の土器の箱だ!しかしその中には…いや、それについてはもう少し後にしよう。

まずは背景からお話しする。

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対特許トロール戦、始まりの終わり

めったにないことだが、今年の8月と9月の大半は「在宅勤務」を強いられた。世界各地への移動、通勤、仕事、取材、講演、その他諸々の仕事の雑事とは無縁の生活に、かなり時間を持て余してしまった。そこで、読んだ。相当読んだ。いつものように悪いニュースは盛りだくさんだったが、時には大変良いニュースもあった。特に、特許トロールとの戦いの最前線からは良い素晴らしいニュースが飛び込んできた。US5490216の特許侵害にあたるとしてUnilocが当社を相手取って起こした訴訟を、テキサス州連邦地方裁判所が退けたのだ。これは悪名高き特許で、2000年台初頭からIT企業を震撼させ、何年にもわたって数々の特許弁護士を立たせ、160社(!)以上の企業に情け容赦なく散財させてきた。かのMicrosoftやGoogleもしかりだ。

だが、素晴らしきニュースはこれで終わりではないのだ、諸君!…

IT業界一丸の取り組みにより、地獄のIT特許の無効化は確定した。だが、祝杯がふさわしいのは今回の無効化にとどまらない。この無効化が米国特許制度の本格的な(遅ればせながらではあるが)変化の兆しである事実もまた、シャンパンをあおるに値する。確かに、当面は「ゆっくり着実に」といったところだが、ゆっくりでも何も変わらないよりはましだ。その変化が世界的に重要な意味を持つなら、なおさらだ。IT業界は、ついに、テクノロジーの発展を搾取する妨げるだけの特許寄生虫どもを駆除できるようになった。

ボールはただ転がりはじめたのではない。斜面を猛スピードで下っている。実用化されることがなく、類似するテクノロジーの開発者から「搾り取る」ための手段でしかないこともある、抽象的なことや時にはあからさまに分かりきったことを書き連ねたいんちき特許(下品な言葉をお許しあれ)の所有者による迫害から守られ、開発者は自由になりつつある。

要するに、特許’216をめぐる話はスリラー小説のようなものだ。そこで、スリルを求める皆さんのために今一度語ろうと考えた次第だ。さあ、コーヒーでも淹れて(ポップコーンがあればなお良し)リラックスしていただきたい。特許に寄生する者にとっては平常心で読めないストーリーだ…

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日本は揺れ、日本は耐える

※元の英語記事は2018年6月29日に公開されました。なお、地震に関する記述は本人が東京で実際に遭遇した経験に基づいたものです。

日本を離れて少し経ったある日、ロシアの新聞を読んでいた私は、日本で地震が発生し、何人かの死者が出たこと、また「輸送手段の崩壊」が起きていることを知った。ガイガーカウンターのことを思い出し(※)、私はすぐにWebで詳報を探した。悲しいことに、死者が出たのは真実だった。だが「輸送手段の崩壊」とは?この地震のモーメント・マグニチュードは6だった。相当な揺れであるのは確かだが、それほどなのだろうか。(※訳注:東日本大震災の際、ユージン・カスペルスキーは福島へのガイガー・カウンター5,000台の寄付を決断し実施しています)

「電車が急停止し(後略)」ともあった。それは当然そうだろう。すべての鉄道には特別なシステムが設置されていて、急停止できるようになっている。そして日本では、地震の15~20秒ほど前に、まるで魔法のように、あらゆる携帯電話に警告が送信される。いったいどうしたらそんなことができるのか私にはさっぱり分からないが、これが大いに役に立つ。私も体験した(2011年のことだ)。そのとき車中にいたが、地元の人間の携帯電話が警告音を鳴らした(我々はすぐに停車した)。15秒もすると、道路沿いの街灯や信号機が揺れ始めた(2011年の震災(マグニチュード9)の余震だったことが後で分かった)。

日本では建物も、道路も、橋も、タワーも、インフラも、すべてが大地震に耐えられるように設計され、建築されている。

確かに鉄道は混乱する。飛行機も欠航する。だが、やがて電車は動き出し、飛行機も飛ぶようになる。日本は地震に対する備えが整っている。そうあらざるを得ないのだ

地震の話はこれくらいにしよう。

そういえば、そもそも日本に何をしに行ったのかというと、目的はいくつかあったが、その1つは千葉(東京の近く)で開催されたInteropに参加することだった。

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箱根の旅館:極上のひととき

元の英語記事は2018628日に公開されました。

みなさん、コンニチハ!

私は今、大好きな国のひとつを再び訪れている。日本だ。この国の労働倫理は本当に驚くべきものだ。皆よく働き、もっと働き、さらに働き、それ以上働く。ありがたいことに、この国の人々は週末をくつろいで過ごすための方法もよく知っている。長旅をしてきた私たちにはそれが必要だった。そのために私たちは大都市を離れ、山あいにある箱根の温泉旅館を訪れた。

日本に行ったことがない?いつか必ず行くべきだ。

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東京の雨、地殻変動の疑問、ロシアの広大な大地、暮れない夕暮れについて

※元の英語記事は2018年6月26日に公開されました。

6月の東京は雨の季節だ。

あらかじめそう聞かされていたし、スーツケースに傘を入れて行けばしのげるだろうと考えていた…しかし、こんなことになるとは!昼も夜も容赦なくノンストップで土砂降りが続くとは思っていなかった。

例のごとく、東京へは仕事で来ていたし、例のごとく、私としては観光も多少しないわけにはいかないと思っていた。だが、降り止まない大雨のせいで結局そんな機会はなかった。なんとも悔しい。

ありがたいことに、雨が降り始める前にかろうじて日本ならではの休息とリラックスの時間を取ることはできた。箱根方面に車を走らせ、旅館に部屋を取り、温泉に浸かって旅の疲れを癒やした。それからキリンとサッポロを絶え間なく流し込み、夜が更けてからは熱燗と冷酒を(そして響も)、おいしい桃の飲み物をチェイサーにしてちびちびやり、こうしたあれこれのおかげですっかりくつろぐことができた。まあ、その話はまた改めてするとしよう。

東京に来た日の話に戻る。幸い平日だったので、雨のことはさほど気にならなかった。

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普通なら耳にすることもない機能(2018年版):KFPで銀行口座を守れ!

着るものを選ぶときに私が唯一重視するのは、機能性だ。きれいな包装だとか、デザイナーズブランドだとか、見た目のステータスなど、私にはまったくどうでもよい。車も同じだ。A地点からB地点へ、時間に間に合うように、安全に、まあまあの快適さで(エアコンがついている、など)、連れて行ってくれればいい。大事なのはそれだけだ。

「重要でないものは無視する」という原則は、サイバーセキュリティ製品を選ぶときにも適用されるべきだ。保護機能そのものには関係のない「その他もろもろ」(販促品や宣伝文句)に惑わされてはならないはずなのだが、多くの人はそこにつられている。第三者機関による徹底した検証では、新しく魅力的な「次世代アンチウイルス」製品の中身がフェイクの人工知能流用されたウイルス検知機能、そして抜け穴だらけの「保護機能」であることが明らかになった。別の言い方をすると、気休め程度のものにすぎない。信頼できないセキュリティ対策を担ぎ上げる派手なマーケティングの犠牲にならないためには、自分でその中身を確かめて、何がどのように機能しているのかを見る必要がある。

とはいえ、サイバーセキュリティ製品の技術文書を熟読して理解するだけの十分な時間、忍耐力、技術的知識を誰もが持っているわけではない。たとえそれができたとしても、製品の開発者側が、専門用語だらけの文書の中に作り話をちりばめている可能性がないわけではない。

我々に関しては、その逆だ。我々は自らの技術に誇りを持っており、技術的な詳細情報を(何も盛らずに)一般に公開しているし、適切に説明されていれば誰でも内容を理解できると考えている。言ってみれば、当社は世界で最も透明性の高いサイバーセキュリティ企業なのだ。検証用にソースコードを公開する用意もある。

それだけではない。当社技術の一端を探しやすい場所で分かりやすく示すために、このブログ『Nota Bene』では、当社の複雑なテクノロジーの重要ポイント(普通なら耳にすることもない、よくあるマニア向け技術文書でもあまりお目に掛からないような、複雑な技術的詳細)を、できるだけかみ砕いて説明する記事を折に触れ投稿してきた。そうした機能の大部分は、表には見えないが当社のサイバー保護製品の根幹を成している。こういった記事には「テクノロジー」というタグを付けてある。

前置きはこのくらいにしよう。今日のテーマは、顧客の口座がハッキングされていることを銀行がどのように知るか、だ。

ある日銀行から、こんな文言で始まるメッセージを受け取ったと想像してみてほしい。「お客様の口座で不審なアクティビティが検出されました…」。あなたはまず、過去数日間の行動を思い返してみるだろう。どこにいたのか、どこで現金を引き出したか、それはいくらだったか、お店やカフェ、もしくはオンラインで何か支払いをしたか。

私ならこんな感じだ。(1)ノルウェーのスヴァールバル、ロングイェールビーンのATMでノルウェークローネを引き出した、(2)ノルウェーのオスロ空港ステーキとビールサラダとミネラルウォーターを購入した、(3)オランダ、アムステルダムのスキポール空港で連れ合いにプレゼントを買い、自分用にまたサラダとミネラルウォーターを購入した、(4)アゾレス諸島近辺のどこかで、飛行機内でのインターネット使用料金を支払った、(5)パナマのトクメン空港バルボアをいくらか引き出した、(6)パナマ市からそう遠くない村で大人数分の夕食代を支払った。これは全部、わずか1日でのことだ。

この一連のクレジットカード取引は、銀行側からすれば、確かに疑わしく見えるかもしれない(このカードの登録先は先ほど挙げたどの国でもない)。地球の最北にある街から1日が始まり、しばらくしたらヨーロッパの都市で高額な免税品を買い、夕方にはパナマに着いて夕食代を支払う、こんなルートで移動した人がかつていただろうか。

疑念はもっともだが、現実問題として銀行は、数百万人もいる顧客の行動を追跡するわけにはいかない。そんなことをしたらどれほどの行員が必要になることか。そんなことをする代わりに、銀行はスマートな自動システム(たとえばKaspersky Fraud Preventionのような)を備えていて、詐欺を高い精度で自動認識している(リンク先は英語記事)。では、Kaspersky Fraud PreventionことKFPの中身をのぞいて、どのようにあなたの預金が守られているか見てみよう。

銀行の顧客は、それぞれに個別の行動モデルを有している。具体的には、利用するデバイス(コンピューター、スマートフォン、タブレット)とアカウント、使用する銀行サービス(インターネットバンキングなど)、そしてそれら要素が相互に関わる際のルールが含まれる数学的なグラフだ。このモデルは、インターネットとモバイルバンキングを使う顧客の特定の行動に関する、匿名化された収集データに基づいて構築されている。重要なことだが、このシステムは具体的な取引そのもの、扱われた金額の合計、請求書の詳細情報、名前などの情報は対象としていない。取引の秘密は秘密のまま保たれている。脅威の算出は、技術的なメタデータと、匿名化された行動の分析のみに基づいて実施される。

このような取り組みにより、さまざまな種類のサイバー詐欺を自動検知可能となっているのだ。

事例1:X氏は自宅のコンピューターでインターネットバンキングのアプリケーションを使用している。本人確認には銀行からもらったUSBトークンが必要だ。しかしある日のこと、悪意あるトロイの木馬が潜り込み(USBポートにトークンを差し込んだままにしていたのだ)、X氏の口座からこっそり送金を始めた。しかし銀行の詐欺対策システムにとっては「こっそり」ではなかった。このシステムは異常な動作をすぐに検知してブロックし、銀行のセキュリティ部門に通知した。

KFPの制御パネル

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【公開書簡】 前略 Twitter社幹部の皆様

「汝が人の舌を引き裂くとき、汝はその者が嘘つきであることを証明しているのではなく、その者の語るであろう言葉を汝が怖れていることを世に知らしめているにすぎない」
– ティリオン・ラニスター(Game of Thronesより。翻訳はKaspersky Lab)

前略

ジャック・ドーシー様、並びにTwitter社幹部の皆様

皆様が最近において、御社のソーシャルメディアプラットフォームの「健全さ」に関する懸念、また、虚報の拡散、社会不和の創出その他に同プラットフォームが利用されかねないとの懸念をお持ちである旨、存じています。安全で友好的なインターネットを長年支持してきた立場として、こうした懸念は私の懸念でもあります。弊社はソーシャルメディアを席巻するこの嵐に関しては周辺的立場にあるものと見ていましたが、それが誤りであったと判明しました。

これが手違いであったとしたら、どうか公に認めていただきたい。そうしてこそ、政治的圧力がかかったのではないかという疑惑を払拭することになる

今年1月末、弊社はTwitter社より、弊社公式アカウントによる広告を禁ずる旨の通告を、思いがけず受領しました。これら公式アカウントは、弊社が所有する各種公式ブログ(SecurelistKaspersky Dailyほか)の新着記事をご案内し、新たなサイバー脅威についてお知らせすると共に、脅威へどう対応するべきかをお知らせするためのものです。匿名のTwitter社員より届いた短いレターでは、弊社が「Twitter広告の容認可能なビジネス手法に本質的に対立するビジネスモデルを利用して活動している(operates using a business model that inherently conflicts with acceptable Twitter Ads business practices)」と記されていました。

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“Kaspersky LabがTwitter広告の容認可能なビジネス手法に本質的に対立するビジネスモデルを利用して活動しているとの当社判断(OUR DETERMINATION THAT KASPERSKY LAB OPERATES US
ING A BUSINESS MODEL THAT INHERENTLY CONFLICTS WITH ACCEPTABLE TWITTER ADS BUSINESS PRACTICES)” ※翻訳はKaspersky Lab
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このくだりを何度も読み返しましたが、これが弊社とどう関連するのか、今なお理解することができません。一つ確かに言えるのは、弊社はいかなる書面化されたルール(あるいは書面化されていないルール)にも反したことがないということです。また、弊社のビジネスモデルは、サイバーセキュリティ業界全体で利用されている「我々は製品およびサービスを提供し、利用者はその対価を支払う」という定型モデルと何ら変わるところはありません。レターでは、弊社が違反したという具体的な(あるいは具体的でないにしても何らかの)ルール、標準、またはビジネス活動について言及されていませんでした。個人的には、この禁止措置自体が、Twitter社の標榜する「表現の自由」の原則に反するものと映ります。この点については後に改めて触れたく、まずはその他の部分に目を向けたく思います。

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11人の勇敢な女性たち、スキーに乗って北極点へ

※この記事は2018年4月15日に公開されたものの日本語訳です。

「北極点までまっしぐら」というタイトルもぴったりだったかもしれない。「女性たち、北を目指す」でもいい。彼女たちが目指すのは北も北、それ以上はない北なのだから。

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