2015年5月26日
アンチウイルスにまつわる亡霊を追い払う
世紀が変わる頃に当社がリリースしたアンチウイルス製品は、一番の失敗作だった。まったくもって失敗だった。マルウェア対策という面では非常に強力で、設定機能もオプションも豊富に備えたバージョンだったが、それまでのバージョンに比べるとサイズは大きいし、遅くて扱いにくいという欠点があった。
「誰の責任だったのか」「他にどうすればよかったのか」というわかりきった質問を繰り出して仮定の話をこね回すことも可能だが、そうするつもりはない(そのとき人事上の重大な決断をいくつか下した、とだけ言い添えておこう)。「たられば」の話をしたところで、「そのときの失敗がなければ、我々の会社は今頃どうなっていたか」など誰にもわからないだろう。重要なのは、我々がどうやって過ちを認め、基本に立ち返り、そして次のバージョンではすべての点で競合他社を凌ぐに至ったのかを明らかにすることだ。実際、そのエンジンがあってこそ、当社は世界全体でのアンチウイルス製品の小売販売実績で優位に立つことができたのであり、その分野で当社のシェアは伸び続けている。
当社の失敗後の製品は、パフォーマンス(効率性ともいう。スキャン中にどれだけのシステムリソースが使われるかということだ)を含めて多くの点ですべての競合他社の製品を凌いでいた。これは確かだ。しかし、遅いというイメージは何年も当社につきまとった…。いや、率直に言って、今でも拭いきれていない。人の記憶は長持ちするし、新しい事実に耳を傾けようとはしないものだ。当時、競合他社はインターネット上で悪評を立てることに多くの労力を注ぎ、今でもそれをやめられないでいる。まあおそらく、その他に当社の評判を汚す口実がないからだろう(笑)。
春の大掃除の時期はとっくに過ぎてしまったが、ここで過去数年の間にたまった当社製品の効率性に対する風評を一掃しようではないか!
ここに、最近のアンチウイルス製品パフォーマンステストの結果を紹介する。定評のあるテスト機関数社の結果からの厳然たる事実のみだ。このデータを材料にいろいろと考えることができる。他のベンダーの結果を見て、比較し、自分なりの結論を出してほしい。
1. AV–Test.org
これまで何度も述べてきたように、客観的な全体像を捉えるには、可能な限り長期的な観点から、可能な限り広範囲のテストを見ることが必要だ。あるベンダーが、店頭で販売している通常の「動作」バージョンではなく、特定のテストに向けて最適化された「調整済み」バージョンをテスト機関に提出して悪評を招いたケースもある。
オーストリアのマグデブルクにあるこのテスト機関では、過去1年間(2014年1月~2015年1月)にアンチウイルス23製品に対して行ったテスト結果を分析して、各製品によってどれくらいコンピューターが遅くなったかを判定するという大仕事を成し遂げた。
コメントはなしだ!
2. AV-Comparatives
最新の2回のパフォーマンステスト(2014年10月と2014年5月)では、アンチウイルス22製品がテスト対象となった。当社は一方のテストでは他1社と同点1位に、もう一方のテストでは他3社と同点2位に入った。
3. Passmark
2015年1月のパフォーマンステストで、インターネットセキュリティのカテゴリとトータルセキュリティのカテゴリで2位にランクインした。
4. Virus Bulletin
12月のテストで、バイナリファイルのスキャンで最速、他のカテゴリで上位の成績を達成した。
テスト機関について言えば、テスト方法はテスト機関の数だけ存在する。それぞれのテスト機関が独自の方法を用いている…それはまったく理にかなっている!そうあるべきだ!当然、それぞれに長所と短所がある。さまざまな意見を総合的に勘案して、できるだけ偏りのない全体像を把握することで、各種の方法やテストに対して実際的なアプローチをとるのが良いだろう。
1つのテストでトップになっても、そのことがアンチウイルス製品の真のパフォーマンスを示すわけではない。何位に入ったかだけでなく、一貫して同様の結果を出しているかどうかや、テスト範囲の広さについても考慮する必要がある。
さらに、もう1つ重要なことがある。テスト結果をよく見てみると、何やら聞いたことのないアンチウイルス製品が非常に高い結果を出していることがある。速いのはいいが、保護のクオリティの方はどれほどのものなのだろうか?考えられる可能性としては…つまり、ウイルスを一切検知せず、駆除もしないようにすれば、パフォーマンスが最速のアンチウイルス製品を開発するのは、実に簡単だからだ!速いソリューションと、まともに機能するソリューション、どちらが欲しいか?そういう話だ!重要なのは、「速い」ことと「機能する」ことのバランスなのだ。
そして最後に。
残念なことに、「コンピューターが遅くなったら、それはアンチウイルス製品のせいだ」という一面的な見方が広く行き渡ってしまっている。実際のところ、コンピューターが遅くなる原因はいくつもあるのだ。アンチウイルス製品とはまったく無関係の原因が。Windowsの設定の問題、古かったり欠陥があったりするハードウェア、互換性のないソフトウェア、空き領域不足やハードドライブの断片化、不要なプラグインや単にクラップウェアが多すぎること、レジストリが整理されていないこと、アプリにパッチが適用されていないこと…それこそ無数にある!
アンチウイルス製品の開発者は、いかに優れたアンチウイルスソリューションであっても遅くて扱いにくければ嫌われることをよく知っている。だから常にパフォーマンスの改善に取り組んでいる。ただしあくまで、保護のクオリティを犠牲にしない範囲でのことだ。
アンチウイルス製品は遅いのか?最新のパフォーマンステストを分析Tweet