2014年1月7日
特許トロールと戦う10のヒント
最近、特に特許トロールとの法廷闘争で勝利したと大々的に発表してからは、特許トロールとどう戦えばいいのかアドバイスがほしいと聞かれることが増えた。そこで、今回は特許にむらがる吸血鬼たちに一矢報いて勝利を収める10のヒントをご紹介しよう。
その前に、このヒントを提供してくれた当社の社員たち(特許トロールと戦った人たちでもある)に、皆さまの盛大なる拍手を賜りたい:
- Nadya Kashchenko, Chief IP Counsel
- Dmitry Polyakov, Head of IP Protection & Defense
- Nikolay Borovikov, Head of IP Research & Analysis
- Sergey Vasilyev, Senior IP Counsel
我々はここ数年、特許のピラニアたちとさまざまな国でさまざまなバトルを繰り返してきたが、その中で特許トロール主義に関するいくつかの結論を導き出した。もちろん、国によって経済や社会政治の特性は異なり、特許法もそれぞれ独自のものが制定されている。それでも、若干の違いはあれ、トロール主義のパターンはどこも総じて変わらない。今回は明確さと実用性を鑑み、彼らに振り回され悩むイノベーション企業を抱えた米国の特許事情に絞って解説する。
1. 冷静になる
ある日、丁寧な文面でしたためられた特許ライセンス料○○ドルの支払い請求書が特許トロールから大量に送られてきた。何の特許を指しているのか調べるために読んでみると、完全に意味不明な内容であることがすぐに分かり、あなたは心拍数が上がり体温も上昇、頭に血が昇って、吸血鬼どもをひねり潰してやりたい衝動に見舞われる。いや、それよりもしばらく弄んで苦しめてから一気に潰す方がいいかもしれない。特許の発明者がハーバード出身のやり手だろうが、知ったことではない。
しばらくして当初の怒りもやや収まると、続いて来るのが逆の感情だ。すなわち、無気力になって「好きにすれば?」とか「どうでもいいよ」といった気持ちになる。だがしばし待て! 前後の反応はいずれも自然なもので理解できるが、実際は間違った対応だ。感情的になると、特許トロールへの対応を妨げるばかりかビジネスを危険にさらしてしまう。
ここは感情的になるのではなく、『銀河ヒッチハイクガイド』の表紙に書かれた「Don’t Panic!(落ち着け!)」を適切なアドバイスとして受け止めてほしい。そもそも、トロールは一度に何千通もの支払い請求書を開発企業に送り付けている。請求書を大量に出せば出すほど、怒りに頭がのぼせ、不適切な対応をし、最終的には手数料を支払う企業が出てくる可能性は広がる。当然、誰もそんな目には遭いたくない。であれば、落ち着いて感情を抑制し、冷静沈着な自分を取り戻そう。
経験者からのアドバイスその1:以前我々は、何らかのモバイル技術に侵害したとイタリアから申し立てを受けた。申し立てには、差し止め命令からライセンス料の支払いまで、さまざまな要求が大量に記載されていた。その特許の定義はかなり幅広く、モバイル技術に関連するものをほぼすべて網羅するような内容だった。
1つめのヒント「落ち着け!」は、この事件がきっかけだ。我々は細心の注意を払って特許を分析し、先行技術について調査したところ、明らかに既存の技術であると分かるようなものについて特許を適用できるのかという疑問が生まれた。そこで、イタリアの特許法について徹底調査したところ、その「特許」は特許と呼べないことが判明した! イタリアの特許審査機関は新規性(その技術が何らかの形で新しいものであることが実証されていること)を確認せずに「特許」を受理しており、形式的な審査しか実施していなかったのだ。イタリアでは既存技術に関する公表資料を、それが存在するにも関わらず(よく分からないが)検討しないらしい。そこで、我々は丁重に(かつ冷静さも忘れずに!)偽の特許で間違った申し立てがされていると伝えたところ、諸々は割愛するが、送られ続けてきた大量の請求書が突然来なくなった。
おかしなことに、イタリアの事案は知的財産(IP)分野で非常に高名な教授が担当してくれたのだが、自身の法律事務所を経営しIP専門家や経験を擁するにもかかわらず、彼は単純(これは実証済み!)であからさまな事実、つまり彼が間違っているという事実を理解していなかった!
2. 詳細を求める
「特許侵害」に関する「クレームチャート」一式を受け取ったら、この2つめのヒントをただちに実行にうつしてほしい。大量の書状が届くだけであれば、ヒント1(冷静に対応する)に従ってから、トロールの特許が自社の技術にどう適用されるのかを突き止めよう。
やるべきことは、特許トロールに少し苦労を味わわせてあげることだ。すなわち、問題を明らかにするための質問を長くて複雑なリストにして送り付けるのだ。彼らも間違いなく、そんなリストを同じように送り返してくるだろう。気を付けてほしいのは、返答は30日以内に行わなければならない点だ(彼らも同様)。
特許トロールの質問に応答しないことが最適な方法と考える人もいるかもしれない。そうすれば、特許トロールは付きまとうのをやめて忘れてくれるかもしれないと期待するからだ。それもありうるが、同時にこの手法にはリスクがある。法廷に持ち込まれ、特許トロール側が「平和的な解決を示したが被告の侵害者は不誠実な態度で適切な対応をせず、穏便な交渉もできず、大人の対応をしなかった」と訴えた場合、応答者(特許用語で被告人のこと)にとっては大きなマイナスになる。また、裁判所が特許侵害に当たると最終的に判断した場合、応答者は(大量の書状から)侵害を認識しながらも故意に侵害したとみなされる可能性がある。故意侵害は特許トロールへの支払い総額を3倍に引き上げることもあり、そんなことは絶対にあってはならない。
まずは、(30日以内に)応答書を送ること。そして、応答書は必ず書面にして、宅配業者を使って送付してほしい。こうした通信方法であれば数か月は保持される。これの主な目的は、特許がどのように侵害されたのかを特許トロール側に明快かつ詳細に説明させて、使用した用語(つまりは定義)すべてが記載されたクレームチャートを送付させることだ。
これは、問題の本質を理解するための準備段階にあたる。その特許トロールが、脅迫して大金をせしめようとするような、ありふれたケチな相手かどうか確かめられるわけだ。また、この段階で上記をすべて行っていれば、結果的に法廷に持ち込まれたとしても、故意侵害の疑いを避けられる可能性がある。
特許トロールは、太陽の下にあるほぼすべてのものに対して故意侵害を主張してくる。たとえば、今年3月にデラウェア裁判所では、巨大特許トロールのIntellectual Ventures(IV)がSymantecに対して複数特許に関する侵害申し立てを行った。IVは、Symantecの独自特許内にIVの特許について触れた部分がいくつか認められたとして、故意侵害を主張した。SymantecはIVの特許技術の存在を知っていた、または知っていたはずであり、これは故意侵害であると証言し、偶然にも3倍の損害を受けたと訴えたのである!
3. 戦略と戦術:非侵害
この言葉は最後まで付きまとうことになる。
ここでは、自社技術の骨子と相手の特許の骨子とを比較し、明快な質問(多いほどよい)を用意して、その特許が他のイノベーション企業にどのような影響を及ぼすのかを調査(影響があった場合は具体的な企業名を出す)、そもそもどのような経緯でその特許がトロールの薄汚れた手に堕ちたのかを究明、今後の展開をいくつか予測し、防御戦略を微調整する。これらアクションはすべて、公判前の調停における最適な対策や、万が一に裁判となった場合の手持ちのカードを決定するためのものだ。この時点で、自社の技術と相手の特許技術との間に何ら重複する部分はないことに気付く可能性が高い。
非侵害を究明するための戦略は、大量の書状を受け取ったときに最適な対策となる(ちなみに、これに関する現在進行中の闘争がある)。
経験者からのアドバイスその2:長年の間、我々は数多くの特許侵害に関する申し立てを受け、特許トロールに一切の支払いをすることなく裁判前の調停に成功している。方法は簡単だ。我々はその特許について本格的な調査を実施し、我々の技術との比較を徹底的に実施した。その結果、両技術はあまりにも違いすぎて、むしろ特許トロールは何について訴えているのか理解しているのかどうかを疑問に思うほどだった!
4. 戦略と戦術:無効性
提示された特許の内容は、すべて正確かつ適切なのだろうか。矛盾する部分を探し、その審査内容をすべて検証して、先行技術が特許を受けているかいないかの検索を行おう。繰り返しになるが、これらのアクションすべては裁判前の調停における防御戦略につながり、法廷に持ち込まれて戦う際の十分な弾薬(データ)を与えてくれる。いくつか先行技術を探しておくと、形勢逆転できるかもしれない。そうすれば、今度はあなたがトロールを追い詰める側になる。
経験者からのアドバイスその3:特許は、いわゆる不正行為で無効化できる。これは、特許庁(米国特許商標局(USPTO))の特許受理の決定に影響を与えた可能性のある、特許出願に関する事実の詐称、改ざん、歪曲すべてが含まれる。我々が対決したある特許トロールは、非常に単純な理由から法廷でいくつかの特許をはく奪された。その理由とは、USPTOに提出した出願書類に特許技術にかかわる発明者がすべて記載されていないというものだった。
無効性につながる不正行為のその他の種類には、次がある。
- 特許出願時に先行技術の資料を計画的に提出していない
- (特許出願を検討する技術に関した)既知の公表資料で、外国語で書かれた資料およびこれら資料の翻訳物のいずれかを、すべてまたは一部、計画的に隠ぺいした
- 宣誓したものを含む、請求項にかかわる発明の特許性に関する事実を歪曲した
経験者からのアドバイスその4:不審なオブジェクトを検疫にかける技術について、ある有名企業から1995年にすでに特許を取得していると訴えられ、長期にわたって論争したことがある。事態が一進一退する中で、我々は特許の非侵害と無効性に関するいくつかの想定シナリオを(複数の地域向けに)開発した。メインのシナリオ(元の出願文を不正に引用したことに対する訂正と、その変更に伴う定義の変更)を開発する一方で、もう1つのシナリオを開発した。それは、メインのシナリオが失敗した場合のバックアップ用だ。このシナリオでは、再審査時に新規性がないと異議を唱えるために、先行技術や公表資料を探す必要があった。この調査には、十分な時間をかけることができた。実際、再審査が行われるまでの10年間(!)を使うことができた。こうして、我々は先行技術を発見するに至ったのだ。その後、交渉時に調査結果や争点を詳細に説明し、相手は我々が簡単に特許はく奪を行使できることに気付き、「訴訟」を取り下げて静かに去って行った。
特許の無効性の訴訟で重要なポイントは、非常に長く退屈なプロセスだということだけでなく、予想以上に費用がかかる点だ。この事案では、50万ドルほどかかった。結構な額である。
では、無効性に関してお勧めの戦法はあるかというと、たっぷりある。このテーマの研究論文もある。ただ1点、ここに述べておきたいことがある。それは、必ず徹底的に発明者の過去を調査することだ。どこで研究したのか、共同発明者は誰か、どの図書館を頻繁に利用したのか、発表した印刷物はないか。インターネット、ハーバード大学の卒業名簿、米国議会図書館のどこであれ、その優秀な個人に関して答弁に使える情報が何かあるはずだ。
たとえば、恩師や同級生と話をするのもよいだろう。もしかして同僚が共同発明者から外されているかもしれない。そうであれば、不正行為による無効性を主張できる。発明者の過去をつつくことで、実はその「発明」が発明でも何でもなく、すでに知られているものであり、その証拠もつかめるかもしれない。
5. 戦略と戦術:免責
もう1つ、特許トロールからの賠償請求を退ける戦略がある。特許トロールの関心を引いた技術が他社の特許であれば、それはあなたの問題ではなく、特許を保有してあなたとライセンス契約する企業の問題になる。もちろんその一方で、あなたがライセンスを許諾する側(使用許諾者)の場合は、特許トロールが引き起こす頭痛の種が単純にあなたのものになるだけだ。いずれにせよ、使用許諾者であれ被許諾者であれ、重要なのはライセンス契約の法的関係を正しく文書化することだ。特に、サードパーティの特許権侵害の可能性を網羅した明確な免責条項は含めるべきだ。
特許訴訟の大半は、特許の補償金を求める行為だ。これは、相当数の企業に該当し、特徴といえる。特許トロールは賠償請求されると、すべてのパートナー企業にこのような書面を送る。「当社は貴社に対して、これとこれのライセンス契約を締結している。よって、同意書に基づき、訴訟に備えて補償金を請求する」。だが、「これとこれ」が特許とまったく関係ないこともある。つまり、巻き込もうとしているわけだ。パートナー企業が手にできるのは、あなたの訴訟に関する無料分析くらいだ。
これは、バカバカしいほど高次元低次元を極めることがある。特許訴訟で法的責任を認めた使用許諾者は、パートナー企業に費用の負担を求めるのだ!
6. 戦略と戦術:サードパーティライセンスの範囲
柳の下にドジョウはもういない。特許にも同じ考えが当てはまる。たとえばMicrosoftから特許の使用許諾を受けた場合、(同じ特許が適用される)Windowsの機能を使用したソフトウェアは特許侵害に対して免責される。だが、ソフトウェアがマルチプラットフォームの場合は免責されない。
経験者からのアドバイスその5:最近のLodsysとの法廷闘争では、Live Chatの機能に関する特許を我々のサイトが侵害したと訴えられた。
Javaで記述されたLive Chatは、Oracleから使用許諾を受けていた。Oracleは必要な特許の使用許諾をLodsysから受けていた。よって、この訴訟では我々やその他多くの応答者に対する請求が却下された。
7. 資金と頭脳
特許トロールに攻撃された小規模な技術会社であれば、こう言うかもしれない。「予算があって弁護士も雇えるのだから、言うのは簡単だよね」。たしかにその通りかもしれないが、だからこそトロールは小さな企業よりも我々を狙うとも言える。
対立が法廷にまで発展した場合、予算はかなり、いやむしろ膨大に必要だ。たとえば、米国の特許トロールと戦った最近の2件は、それぞれ100万ドルと250万ドルかかった。もっとも、資金がなく、特許の専門家がいなくても、気落ちすることはない。対策できる方法は、ほかにあるからだ。
それは、特定の特許訴訟の被害者と組んで協力し、資金を出し合って法定代理人を雇用する方法だ。EFF(電子フロンティア財団)のような弁護士グループや、または特許の騒乱に手助けしてくれる非営利組織の活動家に声をかけるのも手だ。冷静に、毅然かつ論理的に対応し、自社の権利を守ろう。世論はあなたの味方であり、トロールと戦って打ち負かした事例も多い。
ただし、万一の場合に備えていくらか資金を用意しているのであれば、今が「万一の場合」だ。自ら立ち上がり、他社の支援を受けず、自社だけで戦うべきだ。これには、いくつか理由がある。
1つは、非侵害に関する状況は被告によって異なり、あなたにとっては単純に適用できない、または無関係な場合もある。技術は企業によって違うわけで、いずれも立ち位置は異なってくる。
2つめの理由は、応答者ごとに独自の視点が存在し、意見を一致させるのはそう簡単ではない。債務上限で議会から合意を引き出すのと似たようなものだ!
そして3つめは、資金を出し合う企業すべてを必ずしも信用できるとは限らないことだ…。
経験者からのアドバイスその6:雇った会社は、たとえ先行技術が実際に存在していても、無効性を主張できる先行技術を探し出せるわけではない。この問題は、IPATとの訴訟で経験した。我々は何十人もの弁護士と裁判に関する電話会議を耐え抜いてきた。最初の30分は丁寧な挨拶で終始し、次の30分は何やらまくしたて、次の30分でようやく合理的なアイディアが出てくる。実績ある司会者がきちんと管理していても、そんな具合だ。司会者がいなかったらどうなるのか、想像してみてほしい!
最終的に我々はイギリスの会社を雇い、しっかり取り組むことができたわけだが、にもかかわらず先行技術は見つからなかった。「何かをきちんとやり遂げたいなら、人任せにはしないこと」。そんな格言があるが、我々はまさにそれを実行した。先行技術の調査を自社で実施したのだ。そして、先行技術を発見!しかも、IT業界の権威者2名にも出会えた。彼らは、我々の立場をサポートしてくれただけでなく、IPATの特許に対する無効性の戦略で素晴らしい助言も提示してくれた。
8. 米国の裁判所:最高の敬意を払う!
論争が最終的に訴訟となり、裁判所から召喚されたとしよう。書状やその他に関する前述のヒントに従ったのであれば、武器には弾薬が込められ、撃鉄も引いた状態にある。そうしたら、特に1つめのヒント(冷静になる)を胸に、次のステージに踏み出そう。
これは、「発見」のステージだ。証言やいわゆる「請求項の解釈」を行う場面だ。
大切なことは、すべてを正確に伝えることだ。開示されていない情報が後に発覚し、当時述べていないことが判明した場合、または証言に矛盾が含まれていた場合、特許トロールはそんな「ごまかし」に食いついてくるだろう。彼らはその事実を法廷で示し、いかにあなたが悪者かを論証しようとするかもしれない。そうなると、裁判官は「有罪」の判決を下し、すぐに賠償金支払いを命じるかもしれない。これは冗談ではない。特許トロールたちには、どこまでも苦々しい思いをさせられる。
続いて、法廷での尋問だ。基本的には偽りのない真実を語る必要があるので、すべての質問に対して明確かつ正確に答えられることを祈ろう。不正確さ、または不明瞭な点が少しでもあれば彼らに利用されてしまう点を肝に銘じたい。
重要なことだが、具体的な質問に回答するときはいつでも、情報を追加することができる。うまくいけば、あなたにとって有利な解釈がされるかもしれない。
そして、ついに請求項の解釈に入る。奇妙な特許用語の1つで、「用語の定義」を意味する。これは難しいステージだ。非侵害で争うのであれば、使用する用語の定義は狭くする必要がある。無効性で争う場合は、定義を広くする。その他の場合は、前述のヒントで努力した内容から、法廷で有利に働くような用語の定義方法が見えてくる。請求項の解釈は、独自に実施するか、または応答者のグループと協力して行うことができる。請求項の解釈の最終成果物は、(すごいページ数の)長文資料になるだろう。たとえば、Lodsysのサイトにあるこれが良い例だ。
見て分かるとおり、Lodsysは用語の解釈の正当性を主張し、応答者のグループも同様のことを行った。その一方で、我々は独自の解釈を展開した。
次のステージでは、情報公開と完璧な準備をもって、法廷に対し最大の敬意を示さねばならない。長期に渡る残念な物語に可能な限り早く決着をつけるためだ。よく分からない理由で特許トロールに同情が集まっていた法廷の時代は終わった。公平が要求される法廷だが、裁判官も人間であり、ニュースを読んだりインターネットを見たりして、特許トロールたちの陰湿な性格をよく知っている。あとは裁判所が公平な判決を下すことを祈るだけだ。
ただし、特許トロールはこの工程すべてを複雑にしようとかかってくるので注意したい。ゲームのクエストで、難しくて矛盾した不条理なタスクが与えられるようなものだ(「君の持っているソースコードを全バージョン渡せ。あと、開発時のメモや図版もすべて添付した資料も全部渡せ!」)。特許トロールたちは膨大な資料をあなたに叩き付けて、法廷にあらゆる種類の提案を浴びせかけ、図太い神経で狂乱を引き起こすなど、ありとあらゆる手段をとってくる。異議申立人がいかに極悪で粗暴な傲慢さを備えているか、法廷で示すだけのためにだ。ここで大切なのは、ゲーム(のクエスト)のように対処することだ。イライラしてはダメだ。特許トロールの行動やモチベーションを落ち着いて分析し、彼らの正体を把握できれば最高だ。そうすることで、心を乱すことなく頭を働かせることができる。知性と論理性を活かし、感情に流されないことだ。
訴訟に関連する往復書簡、通話内容、Skype、メールのすべて、とにかくすべては(コピー、ログ、録音、ビデオなど)正式に記録しアーカイブする。特許トロールはあなたのバランスを崩そうとして、これら情報を絶え間なく要求するだろう。裁判所はこうした要求の本質を完全に理解しているので、素早い対応と完全な協調性を示すことができれば信用を獲得でき、裁判所は迅速に特許トロールをやり込める判決を下す可能性もある。
経験者からのアドバイスその7:Lodsysとの戦いで、我々の代理で出廷した専門家とのSkypeのスクリーンショットが突然請求されたことがある。Lodsysが我々の争点を除外したいがために言い出したのは明らかだった。我々の立場を裏付ける説得力のある書面は他にも多くあったため、裁判所は少なくともスクリーンショットがなくても、それほど気を留めなかっただろう。しかし、スクリーンショットを用意できたことと情報公開の姿勢を示せたことで、我々の意思と入念な準備を見せつける結果となった。裁判官はLodsysの申し立てを吟味することはなかった。
9. メディア活動
屋根の上、テレビ、インターネット、新聞紙、雑誌で特許トロールとの訴訟の情報について、つまびらかにしよう。インタビューを受けて、プレスリリースを出し、TwitterやFacebook、さらにはInstagramを使ってもいいだろう。アンチトロールのラップを作曲してYouTubeで披露してもいい。何でもありだ! 独力でやるか、その他応答者と協力してもいい。自信を後押ししてくれるだけでなく、支援や役立つアドバイスなどの良いフィードバックも得られるだろう。もちろん、特許トロールの士気をくじく効果もある。
10. 最後の砦
法廷の日が近づくほどに、恐怖は増していく。
しかし、これは特許トロールも同じだ。このステージでは、再度1つめのヒントに戻り、3回読み直して、映画『ロッキー』でも見てから、自信あふれるツイートを何回かしてみよう(ツイートは多いほど良い)。そうしたら、特許トロールから新たに届いた文書を注意深く読もう。そこには、あなたの集団的知性を洗脳しようという試みで、あなたの粘り強さを称賛しながら、適度な額による法廷外の和解が全員にとって最適解であるとし、その理由を1つか10ほど挙げられているだろう。
もちろん状況はみな違うが、自分の無罪を100%確信しているのであれば、特許トロールのこんな申し入れを受け入れてはいけない。最後まで戦うべきだ! ここまで戦ってきたのだから、なおさらだ。これは法廷という名の遊び場だ。いじめっ子には立ち向かわないといけない。覚えておきたいのは、特許トロールは法廷に持ち込まれるのを本当に嫌う(ポイント:特許の無効性 = 特許使用権の失効)。訴訟を取り下げる可能性は非常に高い。
ただし、裁判所が判決を下すまでは絶対に勝利を祝ってはならない。勝訴が「確実」と思っても、もしかしてそれは特許トロールの仕組んだ罠かもしれないからだ。安心しきっている裏で、新たな陰湿な攻撃を考えているかもしれない。
経験者からのアドバイスその8:和解の可能性は、裁判のはるか前から提示され始める。裁判が近づくほどに、特許トロールの要求は減っていく。我々は通常こうした和解にまったく関心を示さず、あらゆる和解を無視して我々の立場である非侵害を主張する。また、トロールと世界中に彼らがただの詐欺師であると直接伝える。何度も繰り返し、不誠実な犯罪者であると訴える。
以上、特許トロールとの法廷闘争の裏話は終わりだ。もちろん、ここで書いた以外の話もあるが、いつでも公表する準備がある。コメント欄で質問するか、アンチトロール専用のメールアドレスまでメッセージを送ってほしい!