特許トロールは打ち負かせる – 決してあきらめなければ

やった!太鼓の音、鳴り響くシンバルに、オーケストラの演奏も付けようか。米国で、またもや特許トロールに勝利したのだ!敵は敗北して意気をくじかれ、去っていった。「あきらめるな!」というチャーチルの言葉は正しかったわけだ。我々はこの忠告に従って、あるトロールと戦った。結果としてトロールはあきらめ、逃げていった。

「衝撃、幸福、喜び、そして高揚感が一気にやってきた」

これはN.K氏(Kaspersky Labの知的財産担当主席顧問)がこの勝利を表して言った言葉だ。今回のトロールはなかなか手強い相手で、かなり太い「コネクション」を持っていたのだ。

lodsys

衝撃、幸福、喜び、そして高揚感が一気にやってきた――その言葉に120%同意する。我々は18か月の間、Lodsys(世界最大かつ最も悪名高い特許トロール、Intellectual Ventures(以下「IV」)の「触手」の1つ)と法廷で戦った。この特許トロールは、無条件の完全降伏に追いやられた。そしてまたもや、我々は独りで勝利したのだ。訴えられた他の54社はこのゆすり屋と和解し、情けないことに戦いの場から逃げた企業もあった。この特許トロールはこれまで400社以上のIT企業から金銭をせしめてきたのだ。

もう少し詳しく話そう。

1992年にある開発者が、ユーザーからの開発者へのフィードバックを通して製品を強化する方法というアイデアを思いつき、特許を取得した(72220787620565)。

2004年にこの特許は、いくつものダミー会社を経由して巨大特許トロールIVの手に落ち、最終的には2010年、IVの子会社であるLodsysの手に渡った。この特許はモバイルアプリのエコシステムとアプリ内購入機能に関連するだけでなく、ソフトウェア業界全体にも影響するようになった。なぜか。あるソフトウェアに、ユーザーがフィードバックを送信する機能が搭載されているとする。たとえば「エラーの報告」ボタンを押してフィードバックを送信するといった場合だ。これで特許侵害なのだ。うそではない。これは言ってみれば、具体的な用途ではなくインターネットに関するアイデアに特許を与えている、ということだ。悲しいかな、これが米国のシステムなのだ。

2011年3月に、我々を含めた数十社の企業がLodsysから書簡を受け取った。そこには彼らの特許に対して少しばかりのライセンス料を支払うようにというお願いの言葉が書かれていた。さもなければ面倒なことになるかもしれないというわけだ。我々のところに来た書簡には、Lodsysの特許は(1)新しいセキュリティアップデートに関する標準的な通知、(2)セキュリティアップデートをダウンロードおよびインストールするためにユーザーに提供されるアシスタンス、(3)Kaspersky Labのクラウド技術(KSN)、(4)製品内でのライセンスの購入と更新、そしてなんと(5)Kasperskyの対話型のサポートサイトすらもカバーしていると書かれていた。事実上、ユーザーとの直接のやり取りのほとんどだ。そう、特許トロールという奴らは世界の成り立ちすら特許の対象にしかねないのだ!

そして2012年5月、この暴挙に反対する我々を含めた人々は、東テキサスの裁判所(トロールが昔から好む裁判所だ)に呼ばれ、公の場でLodsysの言い分を聞くことになったのだ。ここで我々は、どうやらLodsysの特許を「侵害して」いるらしく、その額は2,500万ドルを超えるほどであることを聞かされた。

あまりに詳しい説明をするのも退屈だからやめよう。我々がトロールと戦うのはこれが初めてではない。だからそんな寄生虫にどう対応すれば良いのか分かっている。最も重要なのは戦略と戦術を練って、要求されたすべての情報をすぐに提供し(ソースコードもだ!)、申し立てには迅速に対応し、問題を解決するにあたって隠し事をせず良く準備ができていると裁判所に示すことだ。また言うまでもなく、落ち着きと自信を示し、自分の立場について断固たる態度を取ることだ。

一方トロールの側は、物事をややこしくするためにあらゆる手を打ってくる。たとえば我々は非常に短期間のうちに、トロールの起こした訴訟の拠り所となっている2,000以上のドキュメントを分析しなければならなかった。我々は自らの分析に基づいて、決定的な反論を考え出す必要があった。そして結局は、我々の反論によって敵は打ち砕かれたのだ。Lodsysは法廷に現れる勇気も出なかったらしい。我々は、Lodsysのどんな特許も侵害しておらず、彼らの要求は根拠のないものであることを証明した。

これが事の次第だ。

被告となった55の企業のうち51社は法廷に現れる前に和解した。最後まで残っていたのはSymantec、HP、Samsungだけだったが、みな最後にはレースを脱落し、法廷に現れる数週間前に和解した。緊張の糸が張り詰め、膝が震える、……バン!Kaspersky Labの弁護士の報告によると、Lodsysは訴訟を取り下げ、裁判官はこの訴訟を「完全に」却下した。つまりLodsysは、我々を相手に再び同じような訴訟を起こすことはできない。

そして結論はこうだ。

  • この訴訟は、特許トロールに対抗し勝利するのは不可能ではないことを再び実証した。
  • 特許トロールには勝利を収めなければならない。そうしないとまたゆすり屋がやってきて、大金を巻き上げられることになる。
  • IT業界は特許トロールとの戦いについて、一貫した立場を確立していない。大部分はトロールに餌をやってしまっているようだ。
  • IT業界の「Big boys」(最大手企業)は間接的に、特許トロール業界の発展に関わっており、そのせいで小さな企業が食い物にされている。
  • トロールは本当に陰険かつ卑劣であり、理不尽な行動で犠牲者となりそうな人を苦しめている。訴訟を取り下げた場合も法的責任は発生しない。
  • 以前は、特許の争いと言えば大手ベンダーの抱える問題だった。いまやモバイルアプリを開発する小さな会社までもが巻き込まれている。この状況が続けば、革新者が手にするべき巨額の金銭が、社会的寄生虫である特許トロールにかすめ取られるおそれがある。それはIT業界の崩壊につながるかもしれない。
  • 政府はトロールに対して確固たる行動を起こし、このページのリストにあるような、具体的で統制の取れた対策を採る必要がある。

だから私は心から、我々の知的財産を守ってくれたKasperskyチームを祝福し、感謝の意を表したいと思う。この勝利によって、ちょっとしたことが起きた。シーバスリーガル18年が、底をついてしまったのだ(笑)。

ip

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